その3 彼女が合格した!
夕方、俺の家にイブが来た。
なんだか不安そうだ。
「ジン、どうしたらいいの? 対魔人部隊のメンバーに選ばれてしまったの何か知らない?ジン」
「えっ、女性も選ばれるの? イブが強いと言ったって、男よりは弱いのに。イブが魔族と戦うなんて無理だよ。断ろうよ、絶対危ないよ」
「断っていいのかな、断ろうかしら。これ読んで。明日来いって書いているの。どう思う?役割とか戦いの事とか説明が無いの。困ったわ」
イブの元に来た令状。
王室発行で、王様と第2王子の連名になっている。
「まいったな。イブ、流石に王様からの招集だから行かなければいけないよ。とりあえず行ってみて説明を聞いてからだよ。ひょっとしたら簡単な世話役とかかもしれないし、魔国と今は戦争なんかないし、悪い事ではないかもしれないよ。心配しないで、いざとなったら俺が守るから!周り中が敵になっても俺は味方だから!」
「恐い、ジン」
「おいで、イブ。俺はどんなになろうともイブのこと愛してるから」
不安が消えないイブの頭を抱き寄せる。
そうだ!
俺は以前イブに贈った銀の指輪を思い出した。
「イブ、俺があげた指輪をちょっと貸して」
イブは左手の指輪を外して僕に渡す。
そして指輪の内側に『640』と数字を掘った。
丁寧に丁寧に少しずつ刻み、イブに差し出す。この数字は俺からのメッセージ。
見るやイブは俺にぎゅうっと抱きついた。
いつかこの指輪にこの数字を彫ろうと思っていたけれど、今日がその日だ。
「嬉しい!お願いこのまま」
帰るまでの暫くの間、イブは俺を離さなかった。
ーーーーーーーーーー
5日経って、次の休みにイブが俺の家に来た。
「ジン、会いたかった!」
イブはドアが開くなり俺に抱きついた。
「どうしたんだイブ。落ち着いて」
「お願い離さないで、私を離さないで!」
流石にアレなので玄関のドアを閉めて、離れないイブを引きづりながら俺の部屋に行った。
今日は家族が居ない。父さんは暫く戻らないし、
母さんはイブが来ると行ったらニヤニヤしながら出かけた。
ベッドに座らせて落ち着かせようとしたが離れてくれない。
今日、なにを話して何処に食べに行こうとか色々考えていたのに全て飛んでしまった。
もうどうなってもいい!ベッドに押し倒そうと決心をした。この様子なら拒否されない!
だが、押し倒されたのは俺だった。
ベッドの中で今までで一番熱いキスをされ、イブが俺の顔を両手で抱きしめる。お陰でおっぱいに顔を埋める事に。
もう、止まらない!
僕の方からもイブにキスをして、手を服の中に入れ全感触を手のひらに。
全く拒否しないイブ、それどころかサカリついている!
服が邪魔だ!
イブの上半身を脱がす。こんなに凄かったのか!
俺は味わいながらもスカートとかも脱がせた。細い腰に形のいい足、そして僕を狂わせる秘部達。
なんて素晴らしいイブ。
どんどんどんどん!
玄関を叩く音がする。そして中年女性の声。
「おくさーん、いらっしゃいますー」
出かけた母さんを訪ねて来たのか。
身を起こしてベッドを出ようとした俺をイブががしっと止める。
僕の口を塞ぐイブ。
「しっ、このまま」
イブが俺を取り戻し、俺の服を剥ぎ出した。
お互い素肌で触れ合うと異次元の快感。
「ジン、きて!」
今日のイブはおかしい。なにか焦っている。
でもそんな事は構わない、イブが欲しい。
美術品の様なイブを乱雑に触る俺の手。
味わっても味わっても止まらない口。
そして遂に未婚者にとって禁断の行為に。
もうお互い汗やらナニやらでテカテカだ。
どんどんどんどんどんどん!
また玄関が。
今度は男の声。
「イブさーん、いるんでしょー」
驚いた!
なんでイブを訪ねて来るんだ。なにか不味いことになってないか?
どんどんどんどんどんどんどんどん!
どんどんどんどんどんどんどんどん!
ますます強くなるドアノック。
「イブさーん」
「お願い続けて!」
まさかのイブの言葉!
「え・・・・」
「早く!」
居留守を決め込もう。
俺は混乱しながらも続けようとした。だが不安感に邪魔される。
ばんばんばん!
今度は窓を叩く音!
すぐ外に居るのか!
何者だ!
まずい、このままじゃ、奴らが入ってくるとも限らない。
でもイブは、
「早く!」
「でも」
どうしたらいいんだ・・・
だが無情な声が窓からする。
「イブさん、5分以内にドアを開けて下さい。服を着る時間くらい必要でしょう。それともこのまま窓から突入しましょうか。ジン君の迷惑も考えた方がいいですよ。彼も未来有る若者なんだから」
「いや!行かない!
ジンと会えなくなるなんて絶対嫌!なんで放っておいてくれないの!今日は自由にしていいって言ったじゃない!私はここに居るの!」
「ジン君や彼の家族の迷惑がかかりますよ」
俺は直感した。
これは、イブだけを脅してるんだ。俺は人質か!
あとで俺なんてどうにでも出来ると。
窓越しに脅迫をしてくるが、決して強盗みたいなことはしない。
奴らはイブの関係者、対魔人部隊関係だ!イブが関わるものといえばそれしかない。
「イブ、俺が奴らに説明するよ、イブは無理だって。他の人にしてくれって」
「なんであたしばっかりこんな目に!死んでしまいたい・・・ジン、離れたく無いよお」
イブは泣いている。
悔しさで泣いている。
「行きたく無い!
行きたく無い!
行きたく無い!」
イブが髪を振り乱しながら首を振り、叫びまくる!
「今から俺たちは結婚するからって言おう!僕と結婚しよう!」
途端、イブが大泣きして俺に抱きついた。子供のように泣きじゃくった。
ーーーーーーーーーーー
やはり彼らはイブの部隊の関係者だった。
最初の中年女性もそうだった。
俺は何人かの男に押さえつけられイブは無理矢理連れて行かれた。更に俺は偉そうな奴らに色々口止めをしてきた。でも、納得なんか出来ない、イブを返せ!
「イブをどうする気だ!」
「彼女は英雄になります。貴方とは住む世界が違う。それどころか私より遥か上の存在になります」
「僕は彼女と結婚するんです、イブもそれを望んでる!イブは行かない!」
「結婚? お気持ちは察しますが、ジン君は『1人』と『国全体』を天秤に賭けられますか?それがイブさんに掛かった使命なんです、これは彼女にしか出来ません。彼女の事は諦めて下さい」
「そんなもの、強い奴の役目だ!イブじゃない!イブが嫌がっている!」
「これは決定事項です。彼女の身分は国で保証されます。そして歴史に残る英雄になるのです。彼女の為を思うなら弁えわきまえなさい」
俺の言う事など、一切聞き入れてはくれない。
さんざんイブに会わせろ!返せ!と反発した。強攻に突破しようともした、捕まれば脱走しようともした。
俺は10日間も勾留された。
ーーーーーーーーーー
あれきり、イブには会ってない。
あの日が俺とイブが会える最後のチャンスだったんだろうか。
あんなに僕を求めたのは、最後だからだったにちがいない。
もしかして、セックスを最後までして妊娠したら任務から下ろされたのだろうか?
もっと俺がさっさとしていればよかった?
いや、奴らは危険な手段をとってでも妊娠を止めたかもしれない。
それとも検査前にイブに忠告すれば良かった?
あのときは力の弱い女子が選ばれるとは思っていなかった。
ああ、
学園卒業して直ぐ結婚すれば良かったんだ・・・愛するイブと家庭を持って子供を作って。
イブも俺もすぐ結婚したかった。でもまわりに流されてしまった、まずは働いて落ち着いてからにするべきというのを真に受けた。あのときはそれが最善かとも思ったけど間違いだった。
そうすれば検査をイブが受ける事すらなかったんだ。
あの頃に帰りたい、学園卒業のあの時に。
まわりの説得に折れずにイブとの結婚をすれば良かった・・・・・・
対魔人の為の勇士という役職が新たに出来るという噂を聞いた。
その者はとてつもない戦闘力を持つ事になると。
まさかイブが?
そこら辺の一般兵にも勝てない女性がそんな存在になるとは信じられないが、イブの扱いが尋常じゃない。
イブよ無事で居て・・・
イブは俺を求めた。きっと助けも求めてた。
イブに会いたい。イブを取り戻したい。
今もイブは苦しんでるに違いない、どうか無事でいて・・・
いつかきっと俺が助けるから!