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その21 隊長の勤め

「今のうちに尋問をしてしまおう」



 仮眠して目が覚めた昼頃に隊員に指示を出す。


 これから逮捕者に尋問をするのだが、相当非人道的な事をする事になるだろう。

 私は王族で色んな者を見て来た。慣れてしまっている、良い事とは言えないが。

 若い隊員にとってはキツいだろう。

 しかし、これから先も『こういう事』はあるから慣れて貰う。

 良い経験だ。


 隊員は半分休ませている。残りの半分で取り調べをしてしまいたい。

 エルザを尋問に立ち会わせ、イブは休ませる。彼女には心を休める時間が必要だ。


 それに、イブは私達3人の中で一番『電波』の感知能力が高い、ずば抜けている。昼間休ませて夜に備えてもらいたい。暗闇の中ではイブは無敵だ。目隠しをしても感覚だけで敵の位置や体勢を識別出来るという。しかもかなりの距離で複数でも。

 私やエルザの数倍敏感だ。

 そして、イブは殺しを躊躇しない。

 殺しに対する迷いの無さは兵士として強力な武器。

 そして、命令に忠実。



 襲って来た冒険者は45人。

 生きているのはジンの襲撃犯を入れて12人。


 33人の遺体が並ぶ。

 生き残りは喋れないように猿ぐつわをして、目隠しをしている。


 尋問では1人ずつ連れて来て、死体に向かわせ、全員の名前を言わせる。

 次に生き残りの全員の名前を言わせる。言わなければ拷問もする。

 そして喋った名前をパティが記録し、私とエルザが嘘をついてないか観察する。


 これを12人やる。

 歩けなくても歩かさせて。


 そして、名前の聞き出しが終わると、死亡者に2人、生き残りで1人、誰にも名前を覚えてもらえない者が居た。

 その生き残りの1人は、他の冒険者の名前を殆ど言えない。

 恐らくはこの3人が依頼者側の者だろう。冒険者に混ざって様子を見て居たに違いない。




 こいつの尋問開始だ。


「これから君の取り調べをする。出来れば素直に全て吐いて欲しいのだがどうだろう?」

 まずは優しく。


「ジンを狙う理由がギルドにはあまり無い。依頼者の事が知りたい。君はそちらの人間だね」


「どうせ、俺は処刑されるんだろ。じゃあ、喋っても良い事無いじゃないか。残念だったな」

 バックに恐い上司が居るようだ。



「冒険者は当然処刑だ。だが、処刑のやり方は私の特権で自由に決められる。ひと思いに終わらせる事も出来るし、5年かけてゆっくり死に至らせる事も出来る。君次第だ。5年もかけてると、その間に色々情報がやってくるから、君は後から後から残念な知らせを聞き続ける事になるがいいのか?」


「・・・・・」

 賊が困っている。

『5年もかける』なんてのは苦痛が半端無い方法に違いないし、『上』にとっては自分が堕ちないように隙をくぐって精神攻撃してくるのも想像出来る。恐らくはどう振る舞ったら良いか脳内シュミレーションしてるだろう。



「はは、最悪な最期だよな、俺」

 なんか語り始めたぞ。



「喋る気はないか?なんなら昨夜()()()()()()()()()()()?」

 1度だけ助け舟をだしてやろう。



「冒険者なら一度逮捕されればそのまま死刑だが、『冒険者で無い』なら話はちがう。ましてや命令されてたなら尚更だ」

 揺さぶりをかける。




「信用出来るものか」

 そう言う割には動揺しているようだ。恐らくは冒険者として最期まで振る舞えと命令されてる。


「こちらも色々思い当たる所はあるのだよ、憲兵に手下が居るくらいの存在だ。一体それは誰かな?」


 賊が私を見る。

 こちらがどこまで把握しているのか興味があるんだろう。

 恐らくは私に対する好奇心、取引に応じていい相手かどうかの品定め。

 まあ、敵の心当たりが多過ぎて困っているんだが。

 我々は強い戦力の勇士を三人抱える為に敵は多い。

 我々を支配したい者も居るだろう。

 滅ぼしたい者も居るだろう。

 既に『6』のように恨みを持つ相手もいる。

 或いは他国かも知れない。

 そして、それらが幾つか協力している可能性も。


 全く心当たりが多過ぎて困る。


 賊に向かって私は幾つか上げる。



「アクシオムか?」

 男に反応は無い。エルザからの信号も『ノー』だ。



「桜花か?」

 これも反応が無い。エルザからの信号も『ノー』だ。

 アクシオムと桜花は隣国の名前だ。



「6か?」

 少し反応がある。

 セニンを暗殺したことで『6』は我々に恨みを持っているだろう。だが、解りやすすぎて『6』は動けないはず。せいぜい密かに資金援助程度だろう。

 エルザは『2』と送ってきた。10段階で表現しようとエルザと決めておいた。2は『ちょっと』という程度。


「ギルドか?」

 更に反応。エルザが『7』と送ってくる。俺もそう思う。


 ここで、本命を出す。


「9か?」

 凄い反応だ。エルザが『10』と送ってきた!

 このあと幾つか家名を出すが『10』を越える反応は無かった。


『9』

 それは親衛隊長の家名。

 あの忌々しい男だ。



「君は顔に出やすいな」

 勿論ウソだ。



「昨夜死んだことにするのと、首謀者として親衛隊に引き渡すのと、楽しい処刑、好きなのを選べ」


 優しく賊に問う。

 お前はもう詰んでいるんだというメッセージ。




『9』と『ギルド』が組んでるのは解った。あとは何の目的でジンを狙ったかだ。

 この男がそこまで知るだろうか?

 揺さぶりに心が揺れるということは、幹部クラスでは無いかもしれない。もし何も言わなければここで処刑してしまおう。

 捕虜が多いとこちらの動きが鈍る。


『9』がギルドを使うなら、実行犯を逮捕した所で真実の証拠提示などなんの役にも立たない。どうせギルドは闇討ちと偽証で来るからな。ならばこちらも目には目をだ。

 証言結果をこちらでコントロールするには、実行犯に生きていてもらうと不都合。

 こちらも都合が良いようにやらせてもらう。




 結局、この男も大した事は知らなかった。


 


 だが、得た物もある。


『まだ終わりじゃない』

 まだ来るのか。



 そして、

『ギルド内で、セニンは親衛隊長の子種』

 と言う噂が流れていたということ。



国としては、冒険者の大量殲滅が出来たメリットがありました。

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