その17 鳥人間
仲間数人と冒険者を迎え撃つ為に出て、すぐに戸を閉めてもらう。
「カイ、頼む!」
閉められた向こうから俺を励ます声がする。
丸太ヤロウに向かって走る!
丸太ヤロウの護衛に斬りつける!
打ち合いを征し1人片付け、横を見ると仲間も1人仕留めた!
次の敵とつばぜり合いになるが、その間に他の仲間が丸太ヤロウを仕留め丸太が地面に落ちる。
『丸太ヤロウ』という護衛対象が居るから奴らは動きが制限されている。
この7人は簡単に仕留めたが、追加が来た!
丸太はほったらかしで俺達を斬りにくる!
運が悪かったな!
お前らは運が悪い、今日の俺は機嫌が悪いんだ!
てめえらのせいでジンが生死を彷徨い、
ココが居なくなっちまったじゃねーか!
マトモに斬りあえば、冒険者になんか負けねえ!
仕事が無いときはダラけきってる冒険者と俺達はちがう!
「うああああああ!」
建物の裏から男の悲鳴が聞こえる!
掛かったな!
当然裏手も警戒したさ。
判り易く丸太を持って来るのと反対にも同時に来ると思ってるとも!
女衆がその為に熱湯を大量に用意して待っていたんだからな!
「あづい、いてえええええ!」
ざまあみろ!
防護の為に色々着込んでいただろう、それに熱湯が染みていつまでも熱いに違いない。
そう言うとき程服が脱げないから地獄だろう。
「うおおおお!」
俺は力の限り敵を斬りつける!
肉を斬る感触。
構わず次も斬る。
中から更に数人応援が来た、頼もしい!
随分冒険者を倒した、いや、弱い奴らが倒れたのか。
強い奴らはまだピンピンしている。
奴らと睨み合いになる。
俺達と熱湯を恐れてか、奴らはすこし距離を取る。
あの距離では湯は届かない。それどころか、俺達の方が湯の射程の中。
打ち合いの無い睨み合い。
見れば少しずつ敵が増えている。
俺の前だけで5人。
建物の横や裏も含めれば20人はいるのか?
なんて数だ!
最初は全部で20人かと思ったのに、減ったのに20人か!
おかしい。
奴らが少しずつ距離を取り始めている・・・・
そうか!
「盾を取れ!矢が来るぞ!」
俺の声に反応して他の者も呼応する。
「盾だ!」
俺が棄てた盾を拾うと同時に冒険者が伏せる。
伏せた冒険者の後ろには弓者が!
俺達が外に出るのを待っていやがった!盾に隠れるように低く構える。
建物の中の戸板を使って作った盾に矢が刺さる!
「うあああああ!」
いてえ!
板を貫通して左手に矢が刺さる!
盾ごと矢を抜こうとするが、痛くて抜けない!
暫くして更に足に激痛が!
左足腿に矢が!
「ああああああ!」
マズい!
いてえ、動けない!
他の仲間は?
どっちからか、痛そうな声が聞こえる、俺と同じか!
視界の先に余裕そうに立ち上がる冒険者達。
今の俺では無惨にやられるだけだ!
そうしたら中の奴らはどうなる!
ひとりでも多く冒険者を道連れにしなければ。
時間を稼がなければ!
女達が望むなら自害もありだろう。その時間ぐらいは稼がないとな・・・・
残る右手に剣を握る。
どうせ助からん。
最後まで藻掻いてやるさ。
片膝立ちで剣を構える。
奴らは少しずつ近づいてくる、まるで楽しい散歩のように。
「ぎゃあああああ」
冒険者の後ろで男の断末魔。
敵も味方も一斉にそっちを見る。
月明かりの中で見えたのは,斬られて倒れる弓者。助けが来た!
刀を振り切った女のシルエット。
女?
ココ?
ココなのか?
顔が見たい!
そしてその辺りに居た味方らしき女が勢い良く走り、男の組んだ両手を足場にして高く跳び、冒険者の頭上遥か上を超してくる!
空からやって来た人間は俺の真横に難なく降り立ち、冒険者に向かって棒を構えた!
そして、
「ジンは生きているのか!」
俺の顔を見て、半分顔が壊れた女がそう言った。