表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/78

その15 女同士でも夜這はあります

 

 っ!



 寝ていた(ラビィ)は何者かに強く口を押さえ込まれて目を覚ました!



 連続勤務あけで久しぶりの実家。

 子供の頃からの自分の部屋で安らかな睡眠をしていたのに突然の侵入者!

 いつどこから侵入した?

 家族は無事か?


 強盗?強姦?それとも夢?


 暗闇でよく見えないが、私の上に誰か乗っている!

 マズい、逃げなければと藻掻いた。

 両手が布団ごと曲者の両膝で押さえつけられているが、縄とかで縛られてる感触は無い!

 藻掻けばいけるかもしれない!


 しかし、曲者は冷たい感触を私の頬に押し付けた、刃物の脅しか!

 顔が切れる恐怖で硬直する。


「静かに!貴方はラビィ。三勇士隊員のラビィですね?」


 女の声だ、

 曲者相手にあっさり認めるのが恐いので答えたくない。

 でも、この部屋に来ているからバレてるということだ。言い逃れようも無い。

 それに口が押さえられてるから答えようが無い、首を縦に動かした。


 親衛隊の実力行使か?

 私に何かするつもりか?


「セニンを斬ったのは貴方?」


 まずい!


 動揺してはいけないと思いつつも目を逸らしてしまう。

『6』の者か?セニンの仇を探しているのか。

 私の命もここまでか・・・


「そうか、貴方か」


 バレている。

 秘密を守る技術を習得した訳でもない。己の未熟さを呪う。

 そして、あの事件は揉み消しきれていないのだと知った。

 首を横に振れば良かったんだろうか?

 だが、セニンを殺したのは間違いではないという信念を持っていたので、否定出来なかった。



 そして曲者は予想していたのと反対の言葉を言って来た。



「乱暴してごめんなさい。どうか、助けて欲しい。一生のお願いだから話を聞いて欲しい!」


 曲者は刃物を床に投げ私の上から降りる。


 捕縛した方がいい?

 殺すべき?

 味方?敵?

 助けてって、どういうこと?

 

 強姦か暗殺かと思ったのに、想像していたのと違う。

 身体は自由になったので、その女の落とした短剣を取り、今度は私が刃を向ける。

 全く抵抗はない。




「皆を助けて・・・・・みんな殺される・・・」

 声の主は涙声になりかけていた。




 ーーーーーーーーーー





「改めて名前を聞こう」


 隊長(アーサー)が私の連れ込んだ『賊』に問う。

 エルザとイブも同席している。


「ココ・1023です。西第4派遣隊です。地方への労働支援と要人警護をしています」


 大きめな椅子に座り、机の上で手を組み、いかにも偉そうだというポーズのアーサー。


 エルザ様は隊長の右側の壁際に立つ。

 反対の壁にイブ。


 私は連れて来たココと一緒に隊長の正面に立つ。


 隊長はココを見る。

 部屋では時たまエルザ様が立ち位置を移す。

 エルザは歩きながらもココを見る。

 ココに背中を向けることは無い。


 私はココから一通りの『話』を聞いて、既に隊長に報告していたが、隊長は『私が直接問い質そう』と今に至る。


「先ず私から質問しよう。短く答えよ。ラビィの顔に剣をつけたのは何故だ?」


「私にとって敵か味方か解らなかったからです」


「他に仲間は?」


「もうひとり居ましたが、斬られました」


「その者の名は?」


「ダロス・71です」


「お前は右利きか?」


「はい」


「恋人はいるか?」


 ココが答えにつまる。

 暫く悩んだあと、


「別れました」


 既に私から先に聞いていた隊長が核心を聞く。


「皆を救いたいか?」


「はい!」


 イブとエルザ様が同時に目を見開いた!

 何が二人を驚かせたのだろう?

 そんなに凄い事を言ったのか?


「ラビィ、もう警戒はしなくても良い。楽にしたまえ」

 どうしてココを信用したのかよく判らないが、勇士三人は強いので心配ない。

 ココがもしここで暴れたとして、一番危険なのは私か。そういえばそうだった。

 ココの側を離れ、イブの横に付く。




 昨晩、賊に実家での寝込みを襲われた時は驚いた。

 女は賊ではなく、公営派遣隊の人間だった。

 その娘ココは味方になってくれる人を求めて私を訪ねたと。


 一通りの話を聞いて私は悩みに悩み、早朝すぐにアーサー隊長を訪ねた、緊急だと。

 そしてココの話を伝え、ココ自身も命を狙われていると伝えた。

 隊長はなんとか内密にココと対面出来ないか?と提案したので、私は親衛隊連絡員の使う抜け道を使いココを隊長室まで連れ込むことにし、成功した。奴らの通り道を自身が使う事になるとは皮肉だ。


「話」の内容はイブには伝えては居ない、刺激が強すぎる。




「イブ、落ち着いて聞くように。絶対に取り乱すな」


 隊長からの予告。これからココが云う内容がきっとイブを狂わせる。

 私はイブの側でイブに私の()()()()()()


「では話せ」



「私の隊が襲われました。ジンが重症です。恐らく今頃次の刺客が向かってる可能性が大きいです。近隣の隊から医者は行って貰いました。憲兵に報告して本部に向かう途中で私達も賊に襲われました。一緒に居た隊員ダロスは斬られ、私だけなんとか逃げることができました。憲兵は信用できません、軍も解らない。一刻も早く助けて欲しい!」


 イブの握る手が痛い!

「痛い!」

 聞こえるように訴える。

 はっとイブが正気に戻り、私の手から手を離す。かなり痛かった折れてはいないが多少はなにかあっただろう。

「落ち着いて。落ち着くのよイブ」

 私は()()()()()()()()()()()()()()()()()


 堪えてイブ!



 まだ始まったばかりだ。



「何故ラビィを選んだ?」


「セニンと対立していた者なら此方側になると思いました。あとは信用出来ません!襲ってきたのはギルドの手下の冒険者ですが、奴等の仲間は憲兵隊や軍の中に居ます!ジンを襲って、私達の口も封じるつもりです!ここままでは隊の皆も殺される!

 奴らは盗賊のフリをしてジンを殺すつもりでした。しかし、ジンはまだ生きています。そして、賊の身元が偶然判明し、ギルドが『誰か』から受けた仕事だと言う事を白状しました。私達はそれを一番近い憲兵隊に報告し、本部にも報告に向かう途中に襲われました。」


『セニンと対立』と言っているが、要はイブの味方ということだ。これを敵味方の判断材料にしたココは賢明だった。そして私が休暇だったときにココに会えたのは幸運だ。

 他の日なら私は官舎泊まりだ。


 腕越しに伝わるイブの動揺。

 久し振りのジンの話なのに酷な内容。たまに何かを求めるように隊長を見るイブ。

 ココの話は更に細部に至り、



「しっ!」

 不意にエルザ様が場を止める!


「ココを隠して!」

 凄い小声で言う!

 私は少ししか聞き取れなかったが、咄嗟にイブがココを隊長の机の下に押し込んだ!凄い早さだ!

 そのまま隊長の横に立ち平静を装うイブ。エルザ様は部屋の角にもたれてリラックスしてる風に立つ。

 私は呆気にとられてそこに居るだけだった。



 ノックの後に入室して来たのは親衛隊長。


「アーサー殿、今日はまだ下に来られないのですか。いかがなされました?」



「問題が発生した」


「どのような?」



「ジン・640が襲われた。これより救出に向かう」


「私は聞いておりませんが、誰がそのような事を?」


 親衛隊長の言葉の後、エルザ様とイブが隊長を見る。

 暫くの沈黙の後、


「ダロスという隊員だ。昨晩秘密裏に来た」


『ダロス』という名を聞いても親衛隊長は無反応だったが、イブとエルザ様が驚いていた。

 私も報告者をココでなくダロスと言ったのは以外だったが、そこまで驚かなかったのに・・・


「君にはイブの縁者の身の安全を任せておいたのだが、失望した」


「申し訳有りません。ですが我々も充分な体制を敷いておりました。後は我々で・・・」



「いや! 任せられん、我が隊が向かう。 全員招集だ!」









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ