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その14 口にしなくても伝わるのです!

 今、私の隊長室にエルザとイブが居る。

 


 私の指示で三勇士隊の規約(案)を読んでいる。相変わらずページを捲るのがイライラする。

 新規約の打ち合わせだ。


 だが実際は違い、我々三人は念信で会話をしていた。あれから結構経ち、長文も慣れた。なんとかイブも会話についてきている。


『私達のこの力は電波というのだそうだ』


『電波?』『でんぱ?』


『そうだ。魔族では更に難しい通信をしている』


『この間のアレ?』


『そうだ。彼等は凄い』


『あれはすごかったです』


 私が魔族の技術者から診察を受けていたときに、魔族が披露してくれた電波のことだ。

 それとその時教えられたことも伝える。彼女らは私と魔族の『会話』を聴いていただろうが、目の前で見てはいない。


『我々は電波が使えたり感じたり出来る身体になったそうだ』


『でんぱ』


『身体の表面の電波を読めば嘘も見破れるのも教えてもらった』


『本当に出来るの?』『ほんとうに?』


『心の状態で纏う電波が変わる。密かに練習して欲しい』


『解りました』『ぐたいてきになにしたら?』


『試しに私を感じてくれ』


 二人の前で私は言葉を喋ってみせる。

 本当と嘘を織り混ぜてゆっくりと。


「原稿を片付けよう。最新版が来たらまた読んで貰うから」

「ああ、最近はザザーンの実が旨く感じるようになったな。もっと食べたいかも」

「平和で毎日読書出来るのが素晴らしい」

「ああ、今日も良い天気だ」

「午後の会議が面倒くさい」

「いろいろあったが、親衛隊長には感謝している。彼は素晴らしい人材だ」


 最後の一言にエルザが吹いた!

 あまりに判りやすい反応だったかな?

 一方イブの身体には盛大に電波が走った。嘘と判る言葉でもイラッとしたようだ。その様子を感じて『虫酸が走る』と云う言葉がしっくりした。


『やりかたはわかりました』

 エルザが返してくる。



『それなら』

 イブが立ち上がり、ドアの方に行く。

『かべごしでもかんじます』


 イブはドアの少し横に立ち、

『ここにみはり』


 少し歩いて止まり、下を指差す。

『ここにねずみ』


 別の壁の前に立ち、

『ここにとうちょうおとこ』



『凄いわイブ!』

『成る程。しかも俺より凄い』

 これを使えば見えなくても物音を聞かなくても探れるわけか。しかも人間とネズミも識別している。

 相手の姿が見えなくても位置が判る。凄い事だ。

 そして圧倒的なイブの感知能力!



 そして壁際で立つイブは盗聴者にも聞こえるであろう声で言った。

「色々あったけれど、今は親衛隊長に感謝しています。結果的に幸せですから」


 イブの身体に特大の電波が走った。






 数日後、私達三人は部屋に集まらず情報交換をした。

 三勇士隊本部にいるスパイ、裏切り者の情報整理をしている所だ。

 今の所、怪しい奴が居てもこちらは気付いてない振りをすることにしている。



 三勇士隊は総員20人。

 勇士が3人で一般隊員が16人で、1人欠員(セニンが死んだ為)で現状19人だ。

 それに邪魔な親衛隊員が常時5人は居る。



 イブの返事。

『しんえいたいはぜんぶだめ。わたしをとうちょうしてるのは○○と●●。たいいんはよくわからない。らびぃはだいじょうぶ』

『めいどはだいじょうぶ。ねんのためらびぃにみはってもらってる』


 エルザの返事。

『親衛隊は全員駄目。隊員は○○○と●●●が怪しい。メイドは判らない』


 私からは。

『同じく親衛隊は全員駄目。外部との連絡員も居るようだ。隊員は●●●と○○○と◎◎◎が怪しい』



 親衛隊は全員信用出来ない。

 16人の三勇士隊も信頼出来る訳ではない。

 セニンという前歴が有る。奴は親衛隊長のコネで入った。

 思わず言った。

『再編が必要かもな』


『ならば、信頼出来る者は?』


 エルザは無かったが、イブが答えた。




『らびぃ』




 即答だった。





 ーーーーーーーーーー




 翌日、私はラビィを部屋に呼び、隊の内情を聞いた。

 一応、エルザにも盗聴対策で同席してもらった。

 ラビィが『こちら側』の立場なのはセニンの件以来知っている。

 正確には『こちら側』というよりイブの味方なのだが。


 ラビィの答えは私の予想を上回っていた。


 ラビィは私の目の前でスパイの名前を全てちいさな紙に書いた。


 やはり親衛隊は全部駄目。

 三勇士隊5名、メイド1名、調理師1名。

 更には親衛隊の連絡員の侵入経路まで書いて私に読ませた。


 しかも一切言葉にせず、紙に。


 そして私が読み終わったあと、ラビィはその紙をその場で自身の口に入れて飲み込んだ。

 彼女はこの本部がスパイだらけなのを知っている。

 イブが信頼してると言っていたが本当に驚いた。

 ラビィが居るのは儲け物かも知れない!



 そこでエルザが初めてラビィに語りかける。

 エルザがラビィとちゃんと話すのは初めてなのだ。


「私も貴方の様な信頼出来る女の側近が欲しい。信頼出来る者を紹介してくれないかしら」

 基本、ラビィはイブの側近として活動している。

 エルザには側近と呼べる者はいない。




「女子は全員大丈夫。1人だけ選ぶなら・・・・・パティ・149です」


魔人の技術者は『電波』という単語しか教えてません。

『電気』『電磁波』『電流』とかは教えていません。

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