その11 健康の為にウォーキング
麦農園での遠征訓練を終え、私達は王都に戻る事になった。
基本食事は自炊、寝所はテントだったので帰る為の片付けが大変だったが、来る時に比べれば食料消費した分、荷物が少ない。
近隣の農園主に小屋を借りる手もあったが、この時期は刈り取り後の麦が積まれているし、脱穀の作業もしている。借りるのは迷惑だろう。
なにより、住民に隊の者の顔を見せたく無かった。交流は最小限にとどめた。
農園の者と交流はなかったが、農園主にザザーンの種を渡して来た。
余ってる土地で育てて欲しいと。食用には向かないが絶やさず栽培を続けて欲しいとお願いした。
雑草のように定着してくれれば良いのだが、世話をしなければ駄目だろうか。植えてみなければ判らない。
帰り道私は歩いた。
馬も馬車もあったけれど、無理を言って歩かせてもらった。
兵達は乗る者と歩く者が時々交代する。
本来なら私は屋根付き馬車の中。だが歩いた。
私を周囲から見えるようにしたくないとかで、他の兵と同じ姿をさせられた。更にはフードをさせられた。顔が醜い私の事を気遣ってくれてるのか、私の顔を恥だと思っているのかは判らない。
これだと性別すら判らないだろう。
歩く事で少しでも鍛えたかった。
そして、道から見える景色の中にジンがいないかと希望を持っていたのかもしれない。
暫くすると、エルザが車から飛び降りて来て一緒に歩き出した。なんの対抗心出しているやら。
しかし、いかにもエルザらしい格好だったので、アーサーに連れ戻され地味な兵服に着替えさせられた。
「おまたせ!」
「別に待ってないんだけど」
「イブがどっか行かないようについていくのよ。アーサーから伝言。川飛び越したり、怪力出したら駄目だって。普通にしてろって」
「そうね」
「それから」
エルザがびりびりと発信してきた。
『し り と り し よ う』
練習にはいいかもしれない。
『う ま』
と返した。