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第六十四夜 焦げた人

 妻が先日、バイト先でこんな話を聞いてきました。


 そのバイト先の建物は一階が店舗部分、二階には従業員の更衣室や調理場なんかがあって、もともと雑居ビルだったらしく、その他には閉鎖したバーの看板がそのまま残っていたり、カラオケボックスの一室のような部屋があったりするらしいんです。要するに二階の一部を少し改装して、使ってるんですね。


 そのせいか、普通ならそこにはつけないだろうって場所にドアがあったり、畳半畳ほどのスペースの三方がドアになっていたりと、とにかく変わった造りの部屋が多い。


 従業員はたいてい休憩のとき、今いったカラオケボックスの一室みたいな部屋で食事をとります。その扉を開けると、正面はもとバーのあった場所。入口の両側の壁が、鏡張りになっているんですね。


 あるバイトの男の子がおりまして、休憩を終えて戻ろうとドアを開けたとき、バーの入口のあたりに人が立っているのに気づきました。


 従業員はみんな、その元バーにあるトイレを使っていましたので、初めは誰かが用を足して出てきたのかなと思ったそうです。


 でも、次の瞬間すぐに、違うことに気づきました。


 その人、真っ黒なんです。


 人の形をしてはいても、全身が真っ黒。『名探偵コナン』の中で、犯人がまだハッキリしていないとき、影のようなもんが出てくるでしょ? あんな感じで、影法師みたいだった。


 その子、慌てて調理場に駈けこんだそうです。それ以来、もう元カラオケルームには行きたくないって、調理場で休憩するようになった。


 でも、調理場ですから何もしない人がいると邪魔になりますよね。それで理由を聞かれて、彼は今の話をしたわけです。


 私の妻は、ただ見ただけで何もされてないんだから、塩でも振ればじゅうぶん、といったそうです。


 帰ってきた妻から聞きましてね、そのバイト先のビル、どうも場所が悪いんじゃないかって調べてみたんです。


 すると、関東大震災でも東京大空襲でも人が亡くなっていますし、さかのぼると安政の大地震のときも、明暦の大火でも被災しているってことがわかったんですよね。


 全身真っ黒だった、というのは、火に焼かれたからなんでしょうか。


 そうそう、影法師のようなものを見た彼は、そいつを見ただけだったら、まだ怖くはなかった、といってたそうです。


 その姿が、自分にそっくりだった。


 もしかすると、何か不吉なことが自分の身に起きるんじゃいかって、それ以来、気にしてるんです。ずっと。

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