表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/78

第五十八夜 ハイヒールの音

 残業で遅くなった日の夜のことです。


 帰宅しようと地下鉄に乗りましてね、いちど乗り換えるんですが、連絡が悪くて結構歩くんです。


 同じ駅で降りる人もあまりいなかったくらいで、連絡通路に出たときには、あたりには誰もいませんでした。


 早く帰りたかったので、急ぎ足で歩いていると、誰かの足音がこちらへ向かってきているのに気づきました。


 カツン、カツン、カツン……と。


 ハイヒールのようでした。


 私の進む道は、つきあたってから左手へと曲がるものですから、当然、角を曲がったときには女の人が歩いているのを予想しました。


 向こうも足早に歩いているようです。


 遠ざかっているのか、近づいているのかは、よくわかりません。ですが、足音の様子から、何となく二十代かなと思いました。


 その間にも、ハイヒールの踵や爪先が立てる音が、続いていました。


 カツン、カツン、カツン……。


 だんだん音が大きくなってきました。


 こっちにくるのかと思いつつ角を曲がっても、予想していた女の人の姿はありませんでした。


 しかし、なおも音がしています。


 カツン、カツン、カツン……と。


 私は思わず、立ち止まりました。


 ヒールの音はそのまま私と行き違って、それからしだいに遠くなっていきました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ