第3話 職業
森を抜け、丘を下りだしてすぐに街というより村と表現する方が正しい小さな集落に到着した。ルアン村というらしく、ミリアはここに住んでいるようだ。
「ついたわよ!ここが私の村、ルアンよ」
辺りを見渡す零太。あまり大きな村ではないが活気があるようだ。ここで村の中心にある銅像をみる零太を見てミリアが答えた。
「あれはレイヴォルト=スペードの像」
「レイヴォルト?」
「うん。このスペードの国を作った初代王でこの村出身なんだって!そんなすごい人がこの村出身だなんて本当にすごい!」
少し誇らしげになるミリア。まだまだ話し足りないように口を開くミリアをよそに
「それで、神殿はどこにあるのかな?」
やれやれとした顔を見せるミリア。銅像を抜け村の奥にある神殿に到着した。
「あれが神殿よ。おばあちゃん!」
「おばあちゃん?」
ミリアの声に反応したのか、神殿の奥から少し背の低い女性が出てきた。
「お客さんかえ?ミリア」
「レイ!私のおばあちゃんのアリア。神殿の神官をしているの」
軽く会釈を交わす零太。
「初めましてお客人。神官のアリアと申します」
「俺の名前はレイ。よろしくお願いします、アリアさん」
「おばあちゃん。レイの職業を見て欲しいの!」
「お安い御用ですよ。どうぞ奥へ」
奥に進もながらミリアはレイの話をする。出会いはもちろん、この世界の常識がわからないことも。
「さぁ、ここですよ」
最深部には大きな水晶のようなものがある。
「まずは職業の話をしましょう」
「よろしくお願いします」
「この世界では15歳のなると職業に目覚める。この世界では目覚めた職業のなかで自分の人生を決めていく。もちろん転職しなくても生きていけるし、家庭用のカードでも仕事もちゃんとあります」
「なるほど。ミリアに来たことと同じだ」
「そして職業には大きく5種類あって、そこからさらにクラスというのがあります。」
「私で言うと職業が商人系で、クラスが鑑定士なの」
なるほどと、うなずく零太。
「まず1つ目は戦士系。クラスにもよりますが、基本的に全ての武器カードが扱えます。他にもクラスによっては補助魔法や回復のカードが使える場合もあります。クラスには剣士や武道家、アーチャーなどがあります」
「ザ、男のロマンですな」
うんうんとうなずく零太。
「ロマン、、なのかな?」
少し困惑した苦笑いを浮かべるミリア。
「2つ目は術士系。この職業はクラスによって使えるカードが大きく分かれます。得意なカードはもちろん魔法系のカード。クラスは魔法使いや僧侶、レアクラスで賢者などが確認されています」
「私は実は魔術系の職業にもなれるのよ!」
「へぇー。ミリアって商人以外にも適正があるんだね」
えへんと自信げにするミリア。
「3つ目は召喚士系。この職業自体は少しレアですね。この職業もクラスによって扱えるカードが違います。この世界にはモンスターや精霊が呼べるカードがありそのカードが幅広く扱える唯一の職業です。クラスには召喚士、精霊士、レアクラスにはネクロマンサーがあります」
「おお。かっこいい!ネクロマンサーかっこいい!」
「レイのツボがよくわからないわ」
少し呆れるミリア。
「4つ目は商人系。カード自体は補助系のカードです。またこの職業はこの世界で唯一商いを許されています。他の3つと違って戦闘系ではありません。クラスには、商人、交渉士、レアクラスはミリアの鑑定士などがあります」
「ミリアの職業ってレアクラスなんだ!」
「私も聞いた時は驚いちゃった」
「そして5つ目は特殊系。稀にこの職業を持って生まれてくる人がいます。4つのどれにも属さないクラス。私のような神官、この世界の王もまた特殊系クラス。天文士というクラスも聞いたこともあります」
「王様も職業なんだ!!」
「この世界は基本的に、選ばれた職業が全てなの。それくらい自分が選ばれた職業を大事にするの」
「なるほど。それで、俺の職業は」
「そうでしたね。では早速」
そういうと、アリアは静かに瞑想を始めていくと、水晶が輝きだした。
「これは!」
「なんですか!?レアクラスですか!特殊系ですか!」
(漫画では転移系はチート系の力があるのがお決まり!一体どんな力が)
「レイ......あなたの職業は」
「俺の職業は?」
ゴクリと息を飲む零太。
「あなたの職業は......ありません」
「へ?」
唖然とする零太。ミリアもアリアも驚いている。
「ほ......本当なの?おばあちゃん」
「本当です......信じられないですが、ひとつも浮かび上がらなかったです」
「そ......そんな馬鹿な。無職なのか俺は」
(チート系の能力はないどころかニートだって......そんな馬鹿な)
「やはり他国の人だからでしょうか。私もこんなことは初めてです」
ショックを隠せないまま神殿を出た零太。とりあえず何か目的が見つかるまではミリアの手伝いをすることに落ち着いたみたいだ。
「げ......元気出してよレイ。きっと何かの間違いだよ」
「ありがとうミリア。俺は大丈夫だから!」
(ショックなのは間違いないけど。。まあ無い物はないしとりあえずどうするか考えよう)
「気分転換に外に出よう!森も近くの薬草を取りに行きたいの」
「わかった。行こう」
そうして最初に出会った森の入り口あたりに移動する2人。数時間薬草摘みを続けていた。
「もうこれくらいでいいかな。ありがとうレイ」
「ずいぶんやってしまったな。そろそろ帰ろうか」
帰路に立とうとしたその時だった。
「えっ」
森の奥からものすごいスピードでこちらに近づいてくる者がいる。
「逃げてレイ!!あれは」
出てきたのは3メートルくらいの熊のような生き物だ。
「魔物よ!」