第2話 異世界のカード
光が消え、辿り着いたのは陽の光が遮断されるほどに薄暗く、驚くほど静かな森だった。
「ここはどこだ?まさか」
こみ上げた感情が爆発する。
「これってもしかして、漫画とかにある転移ってやつ!?マジかよ」
「とりあえず落ち着け俺。漫画ではどうするんだっけ?」
驚きと興奮が隠せない零太だが少しずつ落ち着きを取り戻していく。
「とりあえ情報だな。この世界の人を探そう」
「ガサガサ......」
急に背後から物音がする。その音は徐々に大きく、確実にこちらに向かってきている。
「誰だ!!だ、、、誰かいるのか」
ビビる零太。正直少し泣きそうだ。
「そこに誰かいるの?」
女性の声がした。草陰から出てきたのは零太の身長と変わらないくらいの金髪の長髪が似合う女性だ。
「さっき向こうで光が見えて。あなたはここで何をしてるの?」
「早速目標達成だな。すいません、、、道に迷いまして」
冷静さを必死に振る舞う零太。それを察した女性はクスッと笑い
「そうなの?なら案内してあげる」
優しい女性で助かった。少しは怪しんでもいいのでは?
「私の名前はミリア。あなたは?」
「俺の名前はレイ......」
(いやいや、俺の世界のことは言わないほうがいいのか?漫画とかでは不審者扱いにされる作品も......)
「レイ?」
ミリアが繰り返す。
「そう......俺の名前はレイ。よろしく!」
「そっか。よろしくねレイ!じゃあ案内するね」
ミリアと共に歩き出す零太。とりあえずはなんとかなりそうだ。
「そういえばレイ。レイはこの辺りの人じゃ無いよね。見たことないお洋服だし」
「えっ!?あ、うん。そう!そうなんだ!遠い国からずっと旅をしてて」
苦しい言い訳だ。
「ふーん。そうなんだ。じゃあどうやってここに?検問は?フォルダもカードも持ってないけど?」
(フォルダ?カード?なんだそれ!?とりあえず誤魔化さないと)
「実はわからないんだ」
「え?どうゆうこと?」
「なんていうか......違う国にいたんだ。何かを境に急にまわりが光って気がついたらここに」
「何それ!?何かの転移魔法か何か?」
「俺にもわからないんだ。だからどうしたらいいかわからなくて......ん?魔法?」
見慣れた言葉だが、聞き慣れない言葉だ。
「魔法を知らないの!?本当に?信じられない」
「お、俺の国には魔法なんてものがなくて」
驚きを隠せいない零太をみて、嘘はつてないと判断するミリア
「嘘をついてるようには見えないわね。じゃあ本当に飛ばされてきたの?」
「あぁ。本当だよ。だからミリアに頼みがある。この国のことを教えてくれないか」
知らないことが多すぎることに不安に思う零太の感情を察したのか
「わかった。歩きながら話しましょう」
出口が近いのか徐々に周りが明るくなっていた。ミリアに案内をしながら話を始めた。
「ここはスペード国。隣国にはハート、ダイヤ、クローバー国があるわ」
「なんかトランプみたいだな」
「とらんぷ?何それ?」
「トランプってのは、1〜13のカードにそれぞれハート、スペード、クローバー、ダイヤの種類があって合計52枚のカードで...」
急に話に割り込むミリア
「それってアーティファクトのこと?」
「あーてぃふぁくと?」
今度は零太がキョトンとする。
「アーティファクトっていうのはこの国を作った4人の王がそれぞれ13枚ずつ作ったと言われる伝説のカードなの!」
(それってトランプでは?)
決して声に出さない零太。また話がややこしくなりそうな予感がしたからだ。
「この4つの国ではカードを使う文明があるの」
「カードを使う文明?」
想像がつかないな。
「見てて」
そう言うと、ミリアは静かに息を整える。
「オープン」
そう呟くと、ミリアの胸元辺りに4枚の白いカードが浮かび上がった。
「おぉ!!なんかファンタジーっぽい!」
「この世界にはカードに力があってそれを使役できるの!例えば...これ」
『ライト』
そう唱えると1枚のカードが輝き周囲を明るくさせた。
「おぉ!魔法っぽい!」
「これがこの世界の魔法になるの。自分が使うカードをこの腰にあるフォルダに収納して使っていくの。」
「さっき言っていたカードとフォルダなんだね」
零太はすんなり受け入れた。
(この手の本をたくさん読んで良かった。)
「カードはなんでも使えるわけでなくて、カードを使う職業とカードのランクによっても使えるものと使えない物があるの」
「つまり自分がなる職業によっては使えないカードもあるってこと?」
「そう言うこと、カードにはE.D.C.B.A.S.SSとランクがあって、どの職業でも使えるのは家庭用品などを収納したE.Dランクだけなの。それ以外はカードの種類とランク、職業がマッチングしないと使えないの」
「なるほど。ミリアにはどんな職業なんだい?」
「私は商人系の職業で鑑定士というクラスなの」
「鑑定士?」
「私は鑑定眼ってスキルがあってカードのランクや効果が鑑定できるの。未知のカードを安全に使うために仕事をしているの」
「職業というのは誰でも自由になれるものなの?」
「そう言うわけではないの。この世界では15歳になると力に目覚め、神殿に行くと自分がなれる職業がわかるからその中から選ぶの。誰でも勇者になれるわけではないわ」
少しクスッと笑うミリア。
「じゃあ、俺も職業があるのかな?」
興味津々の零太。
「あるんじゃないかな?良かったら私の町の神殿に寄って行きなよ」
「本当に!?行きたい!」
「じゃあ決まりね。あっ、カードを使わないときはカードを収納するの」
「クローズ」
そう言うと、カードは消えて言った。
「さあ。もうすぐ着くよ。森を出たらすぐなの」
森はすっかり明るさを取り戻し、外の風景も見えてきた。
カード紹介
ライト
ランクD
周りを明るくする魔法。使用者の魔力量で明るさが違う