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5.ピンチ!? ①

 才蔵と茜、2人の強そうな刺客の登場に、星斗は振り返った。


「ヤバイ」


 いくら晶が怪力でも、多少武術の心得があろうとも、敵わない相手というものはいる。しかし、駆けつけてやろうにも死神の数が多すぎて、蹴散らしても蹴散らしても湧いて出てきた。これでは助けに行けない。


「KURAGE! しっかりサポートしろよ!」


 そう叫ぶと、黒い翼軍団の向こうから、『はいですぅ~!』と小さくKURAGEの声が聞こえた。




 ヒュッと頬のすぐ傍を短剣が掠めていく。


「うわああっ、顔に傷がつくっ」


 慌てて避けると、今度は別方向から茜の短剣が繰り出された。


「どわああ!」


 叫びながら何とかそれをかわす。


『晶さん、いいですよ! あっ、目を瞑らないで! 右後方から来ますよっ!』


 KURAGEが後ろから声をかけてくれるが、それに耳を傾けている余裕はない。


「動きが早いぃ~!」


 今までの死神たちとはまるでスピードが違う。避けるのに精一杯で、攻撃する隙がまったくない。


『きゃああ~、晶さん、危ないっ!』


 KURAGEが叫んだ瞬間、トン、と軽く足を払われ、空中でのバランスを失って引っくり返った。


「お覚悟を!」


 茜が短剣を構える。


(ヤバ──!)


 思わず目を瞑りそうになった、その時。


『リングパワー、ぜんか~い!』


 KURAGEがそう叫び、薄暗い空に自動車のヘッドライトほどの光を四方八方に巻き散らかした。


「うっ!?」


 茜、そして才蔵、突然の光を正面から受けて、ともに両腕で顔を覆った。他の死神たちもその眩しさに動きを止めた。


「す、凄いKURAGEちゃん!」


 晶は尻餅をついたような格好でKURAGEを褒め称えた。しかし。光はすぐに弱まっていき、消えてしまった。


『はうっ、電池切れですぅ……』


「……」


 リングパワーって、電池の力なんだ……。ていうか、KURAGEの動力って電池なんだ……。晶はガックリ肩を落とした。すぐに才蔵と茜は体勢を整え、再び晶に向かってきた。


(今度こそピンチ!)


 晶は体を起こすと、後ろへと飛んだ。しかし逃げ切れるものではない。


「うわああ、KURAGEちゃ~ん!」


『晶さあ~ん!』


 2人は手を握り合い、向かってくる才蔵と茜に身を震わせた。


 そこへ。


「ボーッと突っ立ってんな!」


 リングパワーで目晦ましにあった死神たちを押しのけ、星斗が駆けつけてくれた。


「星斗!」


 晶の声に星斗はチラッとこちらを向いて、すぐに才蔵、茜に向き直った。スッと身を低くすると、白い羽根を羽ばたかせ、まずは才蔵の正面に出た。剣が風を切り、才蔵に襲い掛かる。それを短剣で防ごうとするが、それより早く腹に剣を食い込ませた。


「才蔵!」


『才蔵様!』


 茜とYUKINONの声が同時に響き渡る。才蔵の体は空中を落下していった。


「YUKINON、才蔵を!」


『はい!』


 YUKINONは急降下していく才蔵を追いかけ、その小さな丸い手で体を受け止める。


『茜様あ~!!』


 空を見上げてYUKINONが叫んだ時。茜もまた、星斗に峰打ちを食わされ、下に落下してくるところだった。


『きゃああ、茜様あ~!!』


 YUKINONは慌てて才蔵を地面に下ろすと、落ちてくる茜をしっかりと受け止めた。



 それをポカ~ンと眺めていた晶は。


「か……格好いい……」


 と思わず呟いていた。


「ちょ、ちょっと、星斗ってあんなに強いの!?」


 KURAGEに向かって叫ぶ。


『そうですよ~。ミカエル様も星斗さんは優秀な天使だっておっしゃっていたじゃないですかぁ』


「そ、そうなんだ……」


 確かに、黒いコートをなびかせて鮮やかに立ち回る姿は、ただの天使とは思えない格好良さだ。頭上で揺れる愛らしい白いウサ耳と、時折チラリする太腿が気になるところではあるが。


 将来有望そうなかわいい顔を足して、女の子天使にモテるのが良く解った。


(これで身長高かったら惚れそうだ……)


 残念ながら、晶より身長の低い星斗は、恋愛対称としてはアウトオブ眼中。対象外。……な、はずだ。



「なんだ?」


 ウサ耳を揺らしながら振り返る星斗がちょっと笑える。しかし助けてもらったばかりなので、ここはおとなしく礼を言う。


「ううん、ありがとう」


「おう」


 星斗はそう返事をして、下を見下ろした。才蔵、そして茜を地面に横たえたYUKINONが、こちらを見上げて頬を真っ赤に染めている。


『うう~……よくもよくもぉ~……』


 キュルキュル音を立てて回りながら、星斗の目の前に勢い良く飛んできた。黒い大きな目を潤ませながら、星斗を睨みつける。


『あんた、なんすっとや!! ご主人様いじめたらゆるさんばいっ!!』


 紐のような腕を星斗に伸ばし、ビシッと言い放つ。先ほどまではちょっと生意気なお嬢様風だったのに……何故か博多弁で。


 星斗、そして晶のポカンとしていると。


『うりゃああ~!!』


 YUKINONの黒い翼がパタパタ動き出し、そこから黄色い光がバチッと飛び出した。


『これでも喰らえぇ~!』


「ヤベっ、晶!!」


 星斗が振り返るのと同時に、YUKINONから凄まじい電撃が放たれた。迂闊にも油断していたので回避出来ない。


「うわああっ」


「きゃああっ!」


 2人とも電撃をまともに喰らい、空中でバランスを失った。体が痺れてうまく羽根も動かせない。そのまま下に落下していくが、途中で星斗に腕を捕まれ、何とか地面に激突は免れた。


「いったああ……」


 土の上に座り込み、頭に手をやる。体中にチクチクとした痛みが残り、すぐには動けそうにない。


「ワリぃ、大丈夫か?」


 星斗の声に顔を上げると、すぐ目の前で大きな青い瞳が心配そうに見つめていた。トクン、と静かに心臓が波打つ。


「あ……うん、ヘーキ……」


「良かった」


 柔らかく微笑んで、星斗はすぐに立ち上がり、才蔵と茜の姿を探した。その鋭い眼差しに更に心臓が波打って……。


(あ、あれ? おかしいな……)


 そっと、胸に手を当てる。


(き、気のせい、気のせい)


 何度か頷いて、晶も立ち上がる。まだ手足に痺れが残っていて少しフラついた。才蔵と茜は少し離れたところで座り込んでいた。やがて、ゆっくりと立ち上がる。そして晶たちの存在に気付くとサッと構えた。


 星斗、晶も構える。


 再び戦闘が再開される……その時。



『うきゅ───!!!』



 1人電撃を免れたKURAGEが、上空で叫んだ。見上げると、YUKINONと向かい合い、見詰め合って……いや、睨みあっていた。


『あんだこそ何すんだべな!! こだごどしてわがんねよ!!』


 KURAGEはそう言い、YUKINONに体当たりした。ぼよ~んとかわいい音がして、YUKINONはクルクル回りながら飛ばされていった。


 やがて回転を止めると、キッとKURAGEを睨み(見た目にはさっぱり睨んでいるようには見えないが)、叫んだ。


『なんですかぁ!! あんた、ちかーっぱムカツク!』


 負けじとYUKINONもKURAGEに体当たりした。


 ぽよ~ん。


 今度はKURAGEがクルクル飛んでいった。


『うきゅ~! 何すんだべ!』


 ぽよ~ん。


『なんすっと!』


 ぽよ~ん。


『何すんだべ!』


 ぽよ~ん。



「ナンスット」「ナニスンダベ」と、2人の戦いはいつまでも終わらなかった……。



「……ねえ、KURAGEちゃんって、東北生まれなの?」


 上空を見上げていた晶が呟いた。


「んなわけねえだろ。大体なんで機械に方言機能が付いてんだ?」


 星斗も首を傾げた。YUKINONも福岡弁だし。本当に、おかしなタイムマシン達である。



 ふと才蔵たちに目をやると、彼らも上空を見上げて、


「こ、こら、YUKINON、やめなさい!」


「怪我をする前に降りておいで!」


 オロオロしながらYUKINONに向かって叫んでいた。その様子を見ている限りでは、やはり悪者には見えない。


「おーい、KURAGEちゃんも降りておいで~!」


 晶もそう叫ぶ。しかし、どつき合う2人(?)にはまったく聞こえていないようだ。


「ったく、何やってんだよ……」


 星斗がそう呟くと。何故かウサ耳がピカッと光った。


「な、何だ?」


 驚いていると、今度は星斗の頭からスポンと抜けて、耳を羽ばたかせながらパタパタ上空へ飛んでいった。


 ウサ耳は体当たりを繰り返すタイムマシン達の前に来ると。KURAGEの前に飛んでいき、耳でぺしぃんとおでこ(?)を叩いた。


『うきゅっ』


 KURAGEは紐の腕でおでこ付近を押さえる。ウサ耳は更にYUKINONのおでこもぺしぃんと叩いた。


『きゃんっ』


 YUKINONも同じようにおでこを押さえる。


 ウサ耳は眩く光りながら、


『喧嘩はいけませんよ~』


 ……喋った。


『ミ、ミカエル様~!』


 KURAGEは大きな目を潤ませてウサ耳を見た。


「ミカエル(様)!?」


 下で晶と星斗が声を上げる。


『KURAGE、今は喧嘩をしている場合ではありませんよ。早く死神たちを捕まえてくださいね』


 耳はピョコピョコ曲がりながら、ミカエルの声を響かせた。


『は、はいっ!』


 KURAGEは頷いて、急いで晶達のところへ降りてきた。


『はっ! 私もこんなことをしている場合ではありませんでした』


 YUKINONも才蔵たちのところへ行く。それを見届けると、ウサ耳は急降下してきて、スポンッと星斗の頭に収まった。


「……」


 星斗はがっくりと膝を付き、「戻ってこなくていいのに……」と呟いた。


「てか、通信機能がついてんだ、これ」


 晶はウサ耳を引っ張った。かなり強く引っ張っても取れる気配がない。どこからかこちらの様子を見ているミカエルによって操作されているらしい。


 兎にも角にも、これで落ち着きを取り戻した一同は、改めて向き直った。






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