ノクターン
重たくなっている瞼を自分の意志とは関係なく動かせば、見慣れたはずの天井が映るはずだった……が、実際に目にしたのは、見慣れないのに、知っている少し散らかった部屋
まただ……
さっきまでの記憶とは全く違う現実
それでも、先程までも話してたはずの人の匂いが鼻をかすめる
首をゆっくり動かして目に多くの情報を与えてやる
幾度となく落ちようとする瞼を必死に目の周りの筋肉が持ち上げる
それでも、瞼は逆らうのだから、厄介なヤツだと思う
隣には見慣れてきた寝顔。多分、しばらくは起こしても起きない
ウソと非現実的なことが好きなヒトだから、そんなものなのだろう
夢の見方がわたしとは違うのだ
「っ……」
首筋にチクっとした小さな痛みを感じ、夜を思い出す
甘美な至福の時間
そして、その代償
あまりにも犠牲にしなければならないものが大きすぎるのは分かっていても、ヒトトキ獲られるその甘い誘惑の時間には勝てない
否、勝つ気さえおきないのだ
生死をかけたモノ
アナタが獲るものとわたしが失うモノ
それにどれくらいの差があるというのだろう?
それでも、限界が近づいてることも確かに感じてる
捧げることができるモノは有限であり、それを無視できるほど、わたしがまだ強くはないのだ
それもまた現実
そこまで、思考をめぐらせて今日は再び意識を手放す
朝日を感じてはいたけど、あと少し、今は壊れかけた偽りの夜を惜しんでいても誰も咎めはしないだろう
その代償は充分に払っているのだから