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プロローグ




どうやら、俺は夢を見ているらしい。



「……や、やった!!!やっと召喚できたわ!!!!!」



気がつくと、そこは教会のような建物の中だった。

その部屋の壇上と思われる場所に俺は立っている。

そして、目の前には真っ白な髪の美少女。

年は同じくらいだろうか、目を輝かせながらピョンピョン跳ねて喜んでいた。


最初は異世界にでも召喚されたのかと思ったが、おれはついさっき眠りについたのだ。


つまるところ、これは夢。

あぁ、夢の中で夢に気づく明晰夢というやつか。


「うーん、でも少し頼りなさそうね……」


おい。


少女は跳ねるのを止め、顎に手を当てながら俺を見てそう言った。


しかし、夢にしてはリアルだな。

こうして抱く感情も、耳に入る音も、視界に入る少女も夢だということを否定するかのように明確な情報として脳に行き渡る。


「あなた、名前はソラっていうのね。」


少女のまっすぐな瞳と目が合った。


「なんで俺の名前を?」

「それはわたしがあなたを召喚したからよ。」

「召喚…?」

「わたしはエスカ。見た感じニートみたいなあなたが、この世界唯一の召喚使に召喚されたことを誇りに思いなさい!」


そう言ってビシッと指を突きつけられた。


………は?


「…あぁ、そういう設定の夢か。」


はぁ、まったく何ということだ。

美少女にニート呼ばわりされるなどまぁ嬉しくないこともないが、なんかこいつに言われると普通にムカつくな。

こんな夢を見るなんてきっと疲れているんだろう。


「違うわよ!俗にいう異世界転移よほら喜びなさい!」

「いやだからそういう設定の──」


そこまで口にすると、少女が俺に近寄り右手を頬に持ってきた。


え、何?

外見だけは美少女の手が頬に触れ、鼓動が自然と早くなる。が、


「痛い痛い痛い!!!」

淡い期待とは裏腹に、自称召喚使につねられた頬に痛みが走る。


「どう、これで夢じゃないって証明になったかしら?」

「おいおい、本気で異世界かよ。え?本当に?本当に異世界?」

つねられた左頬を擦りながら呟く。


「だからそう言ってるじゃない。」


……。



「ッシャアァァァァァァァァ!!」

「ヒッ…」


ようやく異世界ということを認めたおれは、瞬時に地面に膝を着きガッツポーズをして体を反らせた。

なにを隠そうゲームとアニメとラノベに染め上げられた至極平凡な日常に飽き飽きしていたのだ。


おれの行動にドン引きしている自称召喚使改め、俗称召喚使が口を開く。



「め、名目上、魔王軍の撃退と世界の開拓のために召喚したけど、まずはわたしの稼ぎのために頑張ってもらうわよ」

「うんうん」


……え?


「あ、そうだ。」

エスカがそう呟くと、どこからともなくパネルのようなものがエスカの体の前に出現した。


立ち上がって、THE異世界アイテムといわんばかりの物に興味津々で見つめる俺に、


「これはウィンドウって言って、この世界の人たちは必ず1つ持っているものなんだけど、ちょっとこれ出してみて。」

「どうやって?」

「同じのを想像するだけでいいのよ。目の前にこれを出す想像。」


訳が分からないが、ここはどうやら本当に異世界なのだ。

とりあえず言われるままにそのウィンドウとやらの想像をしてみる。


……。


「うおっ!」

思ったよりすんなりでてきた。


「それをスクロールしていくと、HELPって欄があると思うから、この世界の基本知識とかはそこを見て学んでちょうだい。説明するのめんどくさいから」


「あぁ、さいですか」

絶対こいつ召喚使の器じゃないだろ!


「それと、ここではさっきみたいに想像から魔法も精製も実現させるんだけど、その際に使う魔力に関して、召喚使に召喚された人間は無制限なのよ。改めてわたしに感謝しなさい!」


おれの中二病アンテナが、魔力と無制限という言葉に反応した。


えっ?魔力無制限?なにそれチートですか!


「つまり…俺には異世界で無双ができる力があると…!?」


と、興奮しているおれの視界の上から何かがヒラヒラと落ちてきた。


「ん?」


目で追い、床に落ちたそれを確認する。



oh,yeah.


俗称パンツだ。女の子の。


しかしなんでこんなところに。

上を見てもあるのは天井のみ。

やれやれまったく、誰かのイタズラなのか、或いはおっちょこちょいな美少女が天井にパンツを引っ掻けたのか知らないが…。


紳士的にしゃがみこんで手に取り、ズボンのポケットに入れる。

すくっと立ち上がり、話を戻す。


「んで、エスカさん。僕には異世界で無双できる力があると」

「なにさりげなくパンツ取ってんのよ変態」


あぁくそ…。違和感のない動きをしたつもりだったが。


「大丈夫だ、温かさはなかった。きっと事件ではないだろう」

「あなたが盗ったことが事件よ」


…………。


流石に降参し、パンツを投げるとエスカは恥ずかしそうに受け取った。


「俺に続いてパンツでも召喚したのか?」

「してないわよ!」


すると、エスカが受け取ったパンツが、光となって四散した。


「お、おま、パンツになんてことを!」

「ち、違うわよ!それにこれ……あんたまさか…」



ポトッ。


頭の上に何か落ちてきた。


Oh, yeah.


いわゆるパンツだ。女の子の。



「あなたが変な想像してるから出てきてるのよ!!!」

顔を赤らめたエスカに指を指され指摘される。



あー…。なるほど。


思った以上に想像実現の力はコントロールが難しいようで。


なおも降り注ぐパンツ。




俺の異世界生活は大丈夫だろうか。





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