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プロローグ「金石事件調査報告書草案」

金石ジンシー貿易公司内部崩壊事件》

 

 世間一般的には、金石ジンシー事件とも呼称される。国際交易商社である金石貿易公司――実態はアジア系マフィア――に関わる一連の騒動の総称。狭義には事務所爆破による主要関係者全員の死亡まで、広義にはログローシノ一家ヴィオラ派の離脱劇までを含む。ヴィオラ派についての詳細は後述のとおり。

 金石貿易公司は、その総本山を東アジアに持つ全世界規模の国際犯罪組織である。詳細は不明ながら「八卦衆」と呼ばれる幹部氏族が置かれており、金石の合衆国支部にあたる当貿易公司は「ウー家」と「トウ家」に任されていた模様。

 今回の内部崩壊は幹部両家の対立により起こったとされている。しかし、両家の関係は悪くなく、事件発生当初よりログローシノ一家――シチリア系マフィア、マンハッタン最大勢力――の関与が囁かれていた。事務所爆破に先立って両家当主の周辺人物が不審死を遂げたという情報も有り、さらにはその実行犯も爆破に巻き込まれ始末されたという噂もある。いずれにせよ警察による捜査は難航を極め、未解明の謎が多く残る事件である。


 金石事務所爆破による内部崩壊事件発覚から遡ること数週間前、ログローシノ一家の内部にも亀裂が発生していた。ボスであるバルトロメオ=ログローシノに反発するグループが、その嫡女たるヴィオラ=ログローシノを中心として形成されたのである。のちに、複数のメディアによって「ヴィオラ派」と名付けられる。

 ヴィオラ派は事件発覚以前から、金石内部崩壊へのログローシノ関与を調べていた。ゆえに、事務所爆破時にヴィオラ自身が巻き込まれることとなる。バルトロメオの実子という立場から考えるに、暗殺が主目的ではなく、あくまで牽制のためであろうと解される。

 負傷によりヴィオラが入院している間も、ログローシノ本家に対する調査は進められていた。特に側近であるキョウイチ=ハタケヤマを軸に、精力的に多くの証拠が集められていった。

 そしてヴィオラが快復してから数週間後、ヴィオラ派は完全に離脱する。ニューヨーク市警をも巻き込んだ抗争の果てに。この時点でヴィオラ派は、ログローシノ本家の弱みに通じる証拠を、ほぼ掴んだとされている。その後は地下に潜伏し、本家に対する潜在的な抑止力となっている。


 金石事件後、マンハッタンの裏社会は一強となったログローシノ一家に支配されるかに思われた。しかし、ヴィオラ派の離脱に勢いづけられた弱小の諸勢力が一斉に活動を始め、ログローシノ本家は影響力を弱めつつある。それは治安の悪化を意味し、警察による対応も未だ不十分である。また、烏家の後継者が金石残党に匿われているという情報もあり、火種はまだまだ絶えそうにない。

 こういった現況において、我々のような民間の保安機構は需要を増すばかりであり、より一層の情勢注視が求められている。

 


  アマルティア・セキュリティ 警備企画部




追記:

 薬物濫用者と思われる集団が引き起こした先日の騒動にて、ヴィオラ派の関与が確認された。現在、追って詳細を調査中である。



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