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汚れた勇者  作者: 汚れた座布団
第三章
15/27

世界樹の森

 エルフの聖域、大森林。その中央に天を衝く、巨木が存在する。その名を世界樹といった。


 その世界樹のたもと(・・・)にひっそりと建つ館がある。名を世界樹の森と言い、この大森林と同じ名を冠していた。


 曰く、エルフの長大な歴史を遡っても、その館がいつ建てられたのか不明である。


 曰く、そこにはエルフの祖先である、始祖エルフがいる。


 始祖エルフ、それは迷信と言ってもいいような、伝説の中でしか語られない存在。エルフの上位存在であるハイエルフの、さらに始まりの存在。


 なぜそのような噂が立つのか? 近くの集落に住む年老いたハイエルフは語る。


「アレは儂の爺さんがまだ元気だったころから、あそこに居る。爺さんもその爺さんから同じことを聞いたらしい。いつからそこに居たのか分からない。

 直接会って話を聞かなかったのかって? いや、とてもじゃないが儂には無理だ。彼女に直接会えるだけの、覚悟も資格も足りてはいない」


 始祖エルフを尋ねる者がいなくなって久しく、その者の存在を人々が忘れかけたころ、一人の男が訪ねてきた。



「フリーで!!」









「ふぉっふぉっふぉっ、おぬし、若いのに儂を指名するとは、なかなか見所のあるやつじゃ」


 いや、だからフリーでって……。まったく指名した覚えがないんだが。


 目の前には、老婆。もう棺桶に片足突っ込んでるんじゃないかというような老婆。受付で「すぐにご案内します」って言われたのに、スゲー時間が掛かるなと思ったら、出てきたのが老婆。

 そして、ようやく受付からプレイルームへ移動、もうナメクジ並の歩行速度で。そろそろプレイ時間終了ではないか? というか、ここでもし「チェンジで」とか言ったら、次の娘が来るころには日付が変わっている恐れがある。


 いや、チェンジしないけど…………ポリシーなんで。


 なんか逆介護プレイとか、スゲー新鮮ですわ。元の世界で、膨大な経験を積んできた俺でも、さすがにそこは未経験ゾーンだぜ。

 いいぜ、やってやろうじゃねえか。婆のパン〇ースを取換えることで、性的興奮が得られるか否か。フッフッフッ、とうとう見えてきやがったぜ、性の限界ってやつがよ。


「ふぉっふぉっふぉっ、それでは始めるとしようかのう」


カポッ


 な、何!? こいつ、入れ歯を外したぞ!


「ふぁふふぁふぇあふぁはふぁ」


 もう何言ってるのか分からねえ!


 そして、婆が動き出す。








 は、速え。


 こいつ、入れ歯を外して加速しやがった。これが質量のある残像、〇91のフェイスオープンみたいなものか。もの凄い□撃だ。


「くそぅ。こ、こんなところで、こんなところで負けるわけには――」


 俺の意識は、敵の□撃によって朦朧としていた。心は折れ、膝を屈し、もう楽になってしまいたい。十分頑張ったじゃないか、ここで負けても、誰も俺を責めることはできない。


 その時、頭の中に声が響く。


「勇者よ、今こそ我を使うとき。我を抜くのだ」


「そ、その声は、インバイ!」


「勇者よ、そなたは、いつもこのような戦いを続けていたのじゃな……先日は、我が悪かった。このような(いくさ)では、剣なぞ何の役にも立ちはすまい。

 今の我のこの姿、全ては戦神の采配であったのじゃ。戦の形が移り変わろうとも、勇者とともにまた戦えることを嬉しく思うぞ」


 優しく支えるような声を聞いて。俺は、また闘争心が湧き上がるのを感じる。


「いやしかし、玩具(どうぐ)持ち込みのオプションが在るのか、尋ねてからにしなければ」


「そんな暇など無い!! 勇者よ、事態は一刻をあらそうのだ。我を抜け! ともに勝とうぞ、戦友よ」


「インバイ……お前、そこまで。分かった、いくぞ。

 ウオォォォォーーーー!!」











 突然だが聞いて欲しいことが有る。


 俺は、常々考えているのだが。

 例えば、毛むくじゃらのオッサンに尻を掘られたとする。これは嫌だ、いや、もう”嫌”とかいうレベルでは無い。そんなものは、性の限界とかとは無関係だ、全くベクトルが違う。



 はたして、本当にそうなのか?



 例えば、ペニバンを装着した絶世の美女に、尻を掘られたとする。これはアリだ。むしろウェルカム。この世界では、分からないが。元の世界では、ほぼ全ての男たちが待ち望んでいるシチュエーションの一つと言えるだろう。


 例えば、美女に見えるニューハーフとのセックス。しかも、フルカスタムされた本物のチューンドボディ(Tuned Body)。もう行為の最中であっても、ニューハーフと言わなければ分からないレベルだとしよう。これもイケる。むしろ、そういった人との行為に対して、特に興奮を覚える人も少なくないだろう。


 例えば、ペニバンを装着した先のニューハーフに尻を掘られたとする。これは、先の二つを組み合わせただけなので、何の問題も無い。絵面的には、先の美女パターンと何も変わっていない。


 例えば、先ほどのニューハーフにモノホン(本物)のチンコが付いていて、それで尻を掘られたとする。これは本物か偽物かの違いこそあり、ちょっと嫌な気もする。しかし、冷静に考えてみると、さほど問題が無いようにも思える。確かに伝わってくる感触は異なるだろう。だが行為そのものは、ほとんど変わらないのではないだろうか。十メートルも離れれば、どっちがどっちかなんて分からない、微々たる差ではないだろうか。そう考えると、やっぱりやって欲しくなってきただろう?



 さて、ここからが本題である。先ほど述べた、美女に見えるニューハーフの改造箇所を少しずつ減らしてゆく。そして最終的に残ったものは、女顔の美男子。これに、尻を掘られるというシチュエーションを考えてみる。



 なんか、イケそうな気がしてきただろう?



 ここまで来れば、女顔の美男子を毛むくじゃらのオッサンに変えることなんて、非常に簡単な話だ。徐々に段階を踏んでいけば、何の問題も無い。


 そして、最初の話に戻る。



”毛むくじゃらのオッサンに、尻を掘られたとする。”



 どうだ、なんかイケそうな気がしてきただろう?



 そう俺たちは、幼い頃から刷り込まれてきた道徳や常識といった偏見で、己の限界を知らぬ間に定めてしまっているのだ。本質的な部分に立ち返れば、 ”毛むくじゃらのオッサンに、尻を掘られること” も ”美女とのセックス” も些細な違いでしかない。二つの行為は、同じことだったのだ。



 限界を作るな。


 限界を超えるんじゃない。


 限界なんて無い、限界なんて無いんだ!!



「勇者よ。我にも分かるぞ、その気持ちが。

 我は地に刺さり、長年おぬしを待ち続ける間、勇者とともに歩む華々しい戦いを夢想しておった。それが無意識に、己の限界を作るということであったのじゃな。我は、自分が”斬る”ことしかできないと決めつけてしまっていたのじゃ。

 しかし、目が覚めた。今の我は、何でもできる気がする。それが戦いであってもなくてもじゃ」


「友よ、分かってくれたか」


「おう、勇者よ。今の我には、たとえ魔王であっても恐れるに足りん。共に行こうぞ」


「そうだな友よ、理力の導くままに」

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