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鎮守の山  作者: 村良 咲
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守り人

 私は守り人としてやらなければならないことの全てを真生に話してはいない。

それは、言い訳になってしまうが、私はこの洞窟の存在について、塞いでしまった方がよいものだという考えがあり、いつの日か全てを真生に話す時、その考えも話そうと思っていた。

だからこそ、真生から聞かされた話は、私には衝撃的なものだった。

 6年生の女の子が行方不明になっているという話は耳にしていたが、まさか富一のところの孫娘の千絵がその女の子を洞窟に連れ込んでいたとは、なんということが起こってしまったんだ。

 洞窟があるということ、どこにその入り口があるのかということ、それは神家と呼ばれる家で、昔から麓の3つの村の決まった神家の家長しか知らないことで、神家と呼ばれるということも家長しか知らないことだ。

そういうわけで洞窟の存在とその意味を知る者は、人数にしたら私を含めるとたったの4人だ。

いや、真生も既に知っているので、5人になる。

 その昔、どうやってその家を選んだのかは伝わっておらず私にはわからないが、ただ、どの家も10代を超え続く家系なので、かなり昔からそこに住んでいる家だと思われる。

よりにもよって、その神家の一つである富一のところの千絵が、こんなことをしでかすとは・・・

 しかし問題は千絵がどうしてそこを知っていたかだ。

洞窟の存在は、決して人に知られてはいけないことだったのだ。

それは富一から漏れたとしか考えられない。

延々と受け継がれてきた中で、その秘密を守らなければいけないという意識が、少しずつ軽いものになっていたのかもしれない。

 そして、こうして秘密を守れなかった者のせいで、罪を犯す人が出てしまった。

それは富一が最も愛し大切にしてきた千絵なのだ。

もう二度とこんなことは起きてはならない。

 「さて、どうしたものか・・・」

口から出たその言葉は、声のかすれで自分の耳にさえ届かないほどだった。

私は冷めきったお茶で喉を潤すと、胸の動悸を押さえるように、1つ大きな溜め息をついた。

 年が明けると次の開洞のための会合がある。

それは、耳に入った公にはできない、したくはない悪人の存在がいるのかどうかを出して話し合う場だ。

 この麓の村では、洞窟の存在を知らないはずなのに、困り果てた人からどういうわけかそんな話が漏れ聞こえて神家の家長の耳に入ってくることがある。

 先代たちが書いてきたノートを見る限り、今までは夫婦親子兄弟の間での手に負えない暴力の話が一番多かったようだが、そんなことがあってもここに閉じ込めるほどのことまでいかない年の方が多く、私の代になってからはまだ山の中に入れた者はいない。

 それが、よりにもよってだ、富一の12歳の孫娘の犯した罪の話を、祖父の富一にしなければならないとは・・・

そして判断を下させなければならないとは、これこそがまさに地獄というものなのかもしれない。

決して漏らしてはならない秘密を守れなかったがためのその代償が、これほどのものだとは・・・

 私は富一の顔を思い浮かべ、忍び寄り逃れられない絶望を与える覚悟がなかなかできないでいた。

 


「鎮守の山」を読んでいただき、ありがとうございました。

この鎮守の山は、この先、〇〇編といった感じで、時代を変えて続編を書いてみたいと思っています。

その節は、またお立ち寄りいただけると幸いです。


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