気楽な所に
「そろそろ帰るか…。」
と俺がふと、呟くと
「お客様お帰りですか??」とニコっとキングさんが、話しかけた。
「はい。そろそろお客さんも増えて、来たみたいなんで、俺はココで。」とお会計を探すと
「お会計は、今ちょうどユウがたってるだろ?? あそこでお願いします。」と促され、カードを2枚渡された。
「1枚は、俺の名刺。1枚は伝票みたいなものだから、お会計で出してくれるかな??」と言うと、またキングさんはお客さんの相手に戻って行った。
ユウの居るカウンターのに近づくと
「お会計ですか?? 先ほど、渡されたカード渡して頂けますか?」
と、何事もなかったかの様にユウが接客をしていた。
お会計を済ましお釣りを受けとると
「またお越しくださいませ。よい夜を…。 …今度呑みに行きません? また詳しくは連絡しますんで。」
そう、笑顔で言われ
「あぁ。そうだね。皆さんによろしく。」そう言って俺はBarのドアを開けた。
が……。
そこには、カズヒコさんの姿があった。
「えっ?? 折角のいいシチュエーションなのに…なんで入口の前に居るんですか??」本当に今日は驚かされっぱなしだ。
「お前は昔からそうだからな。」と笑われた。
「この後用事あるか?? 無いならこれから、呑みに行かないか?? 気楽な所に。」
カズヒコさんが言う『気楽な所』は度々舞台終りに連れていって貰った、居酒屋だ。
「はぁ…。オーナー?また、仕事おれに押し付けて、呑みに行くおつもりですか??」ドアに、もたれ掛かっているユウは呆れた様子だ。
「ユウ、お前も行くか??」とカズヒコさんはニヤリと笑った。
「オーナーが、残って仕事してくださるなら、ぜひ。」そう、ユウが返すと
「でも、無理みたいだぞ。お前の後ろで、トシユキがこっち睨んでるからな。」とカズヒコさんは、ユウの後ろを指差した。
「ユウ、はやく戻れ。これから、忙しい時間になるの分かってるだろうが。」そう言って、ユウのYシャツの襟を掴んだ。
「分かりましたよ!戻りますから、襟掴まないで下さいよ!」と半ばユウは連行されるように、トシユキさんと、戻って行った。
「さてと…。アイツらも行ったことだし、呑みに行くか。トシユキが来ると俺まで、ああやって連行されかねないからな。」と、早足で歩きはじめた。
俺が「店放っておいて、いいんですか?」と聞くと
「アイツら2人が居れば、混雑時でも最低限は、営業は出来る。 それに、ユウには、今度埋め合わせしてやるさ。 って訳だから行くぞ。」