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Bar pomegranate  作者: 裕澄
43/48

オレンジ

ブルーセカンドの定期稽古(発声やエチュードなどの稽古)を終えると

カズヒコさん(座長)から

「マサヤ。このあと空いてるだろ?? 久しぶりに飲みに行くか!」と

半ば強引に誘われ、Bar pomegranateで働くと宣言したあの日以来、カズヒコさんと2人で、飲みに行く事になった。


「今日の店は、めったに人を連れて行かない、ひいきにしてる店に連れてくとするか。」と

カズヒコさんは、ニコニコと笑って俺の目の前を歩いている。


Bar pomegranateから、徒歩10分程にある飲み屋街の様な一角にたどり着いた。


店の名前を見ると【スナック オレンジ】と書いてある。

俺を馴染みのスナックに連れてくるって、どういう事なんだろう?と、思いながら

カズヒコさんの、

相変わらず読めない行動を考えつつ

店に入って行ったカズヒコさんの後を追って店に入ると、

店のカウンターには、

ユキコさんが着物で立っていた。

「いらっしゃい。珍しく早いやん、カズヒコさん。いつものでえぇんよね?」と、言うと、ユキコさんはドリンクを作りはじめてしまった。


「マサヤ。どうせ、連れて来られたんやろ?カズヒコさんに。で、何飲む?」

と俺のに注文を取ろうとすると、

「マサヤも、俺と同じのを薄めに作ってやってくれるか??」

と、問答無用でカズヒコさんに注文されてしまった。


「あぁ。ユキコは、pomegranateウチに手伝って貰ってるけど、本当はスナック オレンジ(ココ)のママもやってるんだよ。」と、言いながらカズヒコさんは、ハイボールを受けとった。


「そういえば、ユキコ。オレンジ(こっち)は上手くいってるみたいだね。」と、言うとカズヒコさんはハイボールを飲みはじめた。

「お陰様でな、まぁ。ウチひとりで店やってるのもあるし、アンタのBar()よりはバタついてないわ。」と、呆れたように嫌みを言ってきた。

「まぁ。結果はよかったんじゃないか? あのバタバタも。ユウ(あいつ)の客は、ほぼマサヤに流れた訳だからな。」と能天気にカズヒコさんが答えた。

「…そのお陰で俺、結構大変なんですけど…。納得してくれないお客さんとか、居るんで…」と、つい愚痴をもらしてしまった俺は、炭酸が多めに作られたハイボールを、半分ほど飲んだ。


「まぁ。誰かって言うたら、マサヤがホントの事知ってるんやろ??って、思ってる人多いやろうな。

で、何聞きに来たん?カズヒコさん。」と、ユキコさんは、カズヒコさんに目線を移した。


「…ユキコには、隠し事できないか。Nebel(ネーベル)のアキラ君と知り合いなのか??」と、静かな口調で質問をした。

「ウチが関西(向こう)におった頃にやっとった時、スナックにアイツが入ってた劇団の座長さんに、連れられて何回か来てた。それだけやけど??」


「…本当にそれだけ??」とカズヒコさんは、ニコリと笑った。

「…あんなに、仕事に真面目なヤツ、ウチは知らんわ。飲みに来てるのに、ウチに取材させてくれ。って、五月蝿(うるさ)かったわ。」と、ユキコさんは、ため息をついた。


「ユウが『大阪時代お世話になった』って、言ってたからあの2人は似てるのかもね。いい意味でも悪い意味でも。」とカズヒコさんは、残りのハイボールを飲み干した。


「…でも。ユウは特に、脚本家としての才能は、あるかも知れません…

でも、仲間を信じないなんて、そんなに寂しいことがあっていいんでしょうか??」と、俺は残り半分のハイボールをぐいっと飲み干した。


「…こんな話してても、酒が不味くなるだけやろ。」とユキコさんが、ポツリと呟くと

俺とカズヒコさんは、うなずいた。


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