CLUB axel
「…なんだか、寂しくなりましたね。ユウが居ないだけで。」と、
ユウの一件があった数日後に来店した
シオンくんが俺にポツリと話しかけた。
「そうなんだよ。ユウも考えがあって、ああいう風になったんだけど。
特にマキさんは、張り合う相手が居なくなったから、寂しいみたいなんだよ。」
とニコリと笑うと、ファジー・ネーブルを差し出した。
「ありがとうございます。マキさんだけじゃなくて、マサヤさんも寂しそうですよ?俺から見れば。
…それにしても、あいつ何してるんですかね??」
「その辺は、全く言わずに辞めてったからなぁ…。俺も詳しくは解らないんだよ。」と、
ミーティングで決めた対処法を使いながら、シオンくんと話していると
「マサヤ、キッチンのヘルプ頼む。オーナーも休みで手が回らないから、すまないな。」と、キングさんに呼ばれた。
俺がシオンくんの方をちらっと見ると
「俺の事は、気にしなくていいですよ。はやくヘルプ行ってあげて下さい。」とニコリと笑われた。
キッチンへ戻ると慌ただしそうに、キングさんが、カクテルを作っていた。
「オーダー品、出来てないのから片付けるぞ。」と、キングさんは短く俺に指示をすると、俺の横に並んでカクテル作りを続けた。
「…トシユキさん。少し、聞いていいですか??」と、俺は隣に居るトシユキさんに話しかけた。
「…あぁ。で、なんなんだ?聞きたいこと。
…まぁ、今話せる範囲でいいなら。だけどな。」
俺は疑問に思ってる事を聞いてみる事にした。
「『関東の繁華街で元1番で誰も寄せ付けへん。って、噂やった男』って、アキラさんがトシユキさんの事言ってたじゃないですか。あれって…」と俺が恐る恐る聞くと。
「その事か。…まぁ、隠すほどのことじゃないんだけどな。」簡単なカクテルを作りながら話しはじめた。
「オレさ、この店で働く3年前まで、 CLUB axelってホストクラブで働いてて、アキラが言うように、昔は"CLUB
axelの一匹狼"って、仲間が寄り付かないことが多かったんだよ。」
CLUB axelって、昔テレビで特集されるのを見たような…。
「当時のオレは、ユウみたいに、『仲間なんて要らねぇ』って思ってたんだよ。No.1になってオレが店引っ張って行ってたら、いつの間にか、"一匹狼のキング"って呼ばれ持て囃されたりして、独立しようとしたら、誰も付いて来なくてな。」
言いながら、どんどんカクテルを作っているトシユキさんの横顔は、どこか寂しそうな顔つきだった。
「仲間の大切さを、そん時に知ったんだよ、遅いんだけどな。気付くのが。んで、ここ今に居るって訳だ。」
「こんな話聞いても、つまらないだろ。」俺とトシユキさんが作ったクテルを俺のトレーにのせると
「ほら、マサヤ。お客さんの所に持って行かないと。みんな、待ってるぞ。」背中を押された。




