"仲間"その後
二人が出ていった後
急に静まり返った店内を、見回していると…
「さてと、閉店作業しないと。明日もあるしね。」と、カズヒコさんが背伸びをすると
「裏切られた直後やって言うのに、呑気に閉店作業出来るん?」と、ユキコさんが聞くと
「…ごめん、おれ。今日はもう帰ってもいい?」と、マキさんが涙をこらえながら喋り始めた。
「…でも、ユウのケジメだけは見てやってもいいんじゃないか??」と、カズヒコさんが店のタブレットをさわり始めた。
「さっきから、思ってたんやけど…ユウがこうなるって、知ってたんちゃう?カズヒコさん。」とユキコさんが、カズヒコさんをキリっと睨んだ。
「…確かに。疑いたくはないけど、それはオレも思った。…どうなんですか?カズヒコさん。」と、トシユキさんも尋ねた。
「まぁ。疑われてもおかしくは無いよな…。俺が知ってたのは、"ユウがNebelだ"って事だけだ。
それ以外は、言うことは無いかな。」と、カズヒコさんが言うと
「…まぁ。今のところは、そう言うことにしといたるわ。」と、ユキコさんが言い終わると
「…ほら。これが、ユウの筋の通し方なんじゃないか?」と俺にタブレットを渡してきた。
渡されたタブレットの画面を見ると
Bar pomegranateのホームページが写し出されていた。
【お客様 関係各位の皆様へ】
お客様 関係各位の皆様
当店『Bar pomegranate』及びにキャストを応援頂き誠にありがとうございます。
突然のご報告となりますが、
当店キャストのユウが、今夜の勤務を持ちまして、当店を退職する運びとなりました。
本人の意向で、
『当日までお客様や関係各位の皆様には退職のご連絡せず、笑顔で楽しんで頂きたい。』と言うことで、ホームページでのご報告となってしまったことを、
ご了解下さい。
今後とも『Bar pomegranate』そして、キャスト一同、お客様の笑顔の為にお店でお待ちしております。
Bar pomegranate 広報担当より
以下
ユウからの皆様へのご報告となります。
お客様並びに関係各位の皆様
この度はこのような形での退職になってしまい、申し訳ありません。
おれにとって
Bar pomegranateで過ごした5年間は、
色々なことを体験出来た5年間でした。
最後まで笑顔でおれと会って頂きたい。という思いのもと、今回の対応になってしまったことを、お詫び申し上げます。
新しい場所へと進んで、
皆様とお会い出来る事があれば、
笑顔でお声おかけ頂けると嬉しいです。
本当にありがとうございました。
ユウ
「…ユウは、これも用意してたって事ですよね?」と、タブレット見ながら言うと。
「…うん。残念だけど…そうだと思うよ、マサヤくん。」と、いつからか泣いていたのか、目を真っ赤にしたマキさんが、俺の肩に手を置いた。
「今後の対応については、明日の勤務前にミーティングをして、決めましょう。それでいいですよね?
オーナー。」とトシユキさんが、一気に仕事モードのキングさんへと切り替わった。
「あぁ。何はともあれ、閉店作業早く片付けるぞ!」と、カズヒコさんが言って、
カズヒコさん トシユキさん ユキコさん マキさん そして、俺 マサヤ の5人になった。
Bar pomegranateの長い一夜が終わった。




