"仲間"後編
「なるべく、穏便に済ませたかったんやけど…まぁ。こうなるんは、分かっとったし。」と、ユウがカウンターの席に座った。
「それにしても、トシユキさん。随分、昔の性格と違うんやな。」とアキラさんがトシユキさんの方を向くと、トシユキさんは、アキラさんの方を睨んでいた。
「…そんなに睨まんとって下さい。 事実や無いっすか。それに取材ん時に
無礼したんは、俺の友人やし。」と、アキラさんはユウの隣の席に座った。
「ニシやんやろ?それ。
…アイツなにやってんねん。
取材し行って『めっちゃ怒られて、帰ってきてーん。』って言うてた相手が、トシユキさんって…。」はぁ。とユウがため息をついた。
「アイツ呼ばわりするんは、良くないんちゃう?
仮にも、これから一緒に旗揚げする、劇団『Mix_1』のメンバーやろ?」
と、ユウの肩に手を置いた。
「…しゃーないわ。あの自称天才にも頑張って貰わな、アカンし。そこは、目ぇ瞑っておくわ。」
とユウは、いつのまにかウーロン茶の入ったコップを手に持っていた。
「まぁ。そんなんどーでも、ええねん。関東の繁華街で元1番で誰も寄せ付けへん。って、噂やった男が
こうも丸くなるえぇ場所って事やん。 オレらも、そんな場所作らな。」と、アキラさんが言うと
「…さっきから、オレの事引き合いに出して、長々と喋りやがって。
オレの過去なんてどーだって、いいんだよ。それより、オマエら。
オレは話の筋通さねぇヤツが大嫌いなんだよッ!」と、トシユキさんが怒ると
「…トシ。アンタだけちゃうねん。コイツらに言いたい事あるのは。」と、ユキコさんが口を開いた。
「…で、いつからあったん?この話。」
と、ユキコさんは、アキラさんとユウを睨んだ。
「それは、俺も聞きたいかな?」と、
ここまで一言も発する事もなかった、カズヒコさんも口を開いた。
「計画としては、1年前位から。Nebelとして脚本も書きつつ、pomegranateで『おれ』としてやりながらやから、
めっちゃ時間かかってもうてん。 もっと早くやるつもりやってんけど。」
と、ユウはウーロン茶を飲み干した。
「それに、オレは関西が主に活動拠点にしてるし、演出の仕事も立て込んどったし。」とアキラさんがニコリと笑った。
「で、このタイミングになったって訳。
でも、えぇんちゃう?
マサヤさんも一人前になったし。
ホンマに、ここに居るん疲れたわ。」と、ユウはまた、背伸びをした。
「そーやろうな。皆さんは、ここでずーっと、仲良しこよしやっとったら、えぇんちゃいます?? ユウの事なんて、忘れて。」
とアキラさんが言った瞬間に、トシユキさんがアキラさんに近づき、殴りかかった。
パーンッ!とパンチの入る音がした。
「…痛っ!流石に、ウチの座長兼看板俳優の顔、殴られるの見てる訳はいかへんからな。」と、言ったユウの左頬は、
赤くなり口元が切れて少し血が滲んでいる。
「トシユキさんっ!何やってるんですかっ!」と俺はトシユキさんの元へ駆けつけた。
「…すまん、マサヤ。」とトシユキさんが俺たちの側へ戻ってきた。
「ユウ、流石に痛むやろ? 治療しつつ荷物持ってこいよ。」とアキラさんが、ニヤリと笑った。
「…誰のせいやと思ってんねん。
まぁ、ええわ。それに、これ要らんから、返すわ。"仲間の証"かなんか、知らんけど。売って、今夜の売り上げの足しにでもしてください。」と、着けていたガーネットのピアスを外し2階へかけ上がって行った。
「…ほんま、すみませんねぇ。
アイツ俺が関西で面倒みとった時は、まだマシな性格しとったんですけど。ひねくれてもうて、ウチのいとこは。」と、アキラさんは、
カズヒコさんに向かってニコリと笑った。
「まぁ。トシユキさんが言うた様に、筋通さないけへん所も、ありますからね。
オーナーさんが言うんやったら、
オレらは、どんなことでもやらして、貰いますわ。」と、真剣な顔つきに変わったアキラさんが、交渉し始めた。
「…店に関しては、お客様に対して筋を通してくれれば構わないよ。 それじゃないと、うちのトシが納得しないしね。」と、トシユキさんも真剣な顔つきだ。
「…Nebelとして、劇団の方はしっかり仕事。してくれるんだよね?」とカズヒコさんはニヤリと笑った。
「…Nebelとして、クライアント様に迷惑かける事は致しませんので。」とアキラさんが言った。
「それは、助かるよ。」とカズヒコさんが笑うと
「…今回は、脚本使用料ゼロでえぇよ。もう脚本は完璧に出来上がってるし。」と、キャリーバックを持って、口元に絆創膏を貼ったユウが降りてきた。
「このUSBメモリーの中にデータで入ってるんで、自由にお使いください。」とカズヒコさんにUSBメモリーを放り投げた。
「演出の件はまた、後日連絡するよ。」とUSBメモリーをキャッチした、カズヒコさんの顔を見ることもなく
「じゃあ。…アキにぃ行かへんなら、置いてくけど?」
と、ユウとアキラさんは、ドアを開けて出ていってしまった。




