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Bar pomegranate  作者: 裕澄
39/48

"仲間"前編

俺が、Bar pomegranateに勤め始めてから、今日で3ヶ月


3ヶ月前、カズヒコさんの無茶ぶりで勤め始めたけど、

この3ヶ月で、俺にとって居心地のいい場所の1つになっていた。


今日は、

カズヒコさんが思い付きで、全員出勤になっていたのもあって、

『お客さんも多くて賑やかな1日だったなぁ。』

と、閉店30分前(25時30分)頃にお客さんの居ない店内を見回しながら

ふと、考えていると1人のお客さんが入って来た。


「いらっしゃいませ。…もうすぐ閉店のお時間ですが、よろしいですか??」と俺が言うと

少し背が高く、帽子を深く被った男性客は、こくりと頷きカウンターの椅子へ腰かけた。


「ご注文は何にされますか??」と俺が聞くと

forbidden(フォビドン) fruit(フルート)で。」と聞き慣れないカクテルをオーダーされた。


ユウから譲り受けた、カクテルレシピ集に書いてあるカクテルは、一通り作れるようになった俺だけれど、わからなかった。

「あっ。この人の注文するの、おれのオジナルなんで。今作りますから、待っててください。」と、何処からともなくやって来た、ユウが背伸びをしながらキッチンへ戻っていった。


「…やっぱり覚えてへんか。」と、男性客がポツリと言った。

「どうされたんですか??」と俺が聞いても「…なんでも。」とポツリと返されるだけで、中々会話が続かず微妙な空気が漂うと、

forbidden(フォビトン) fruit(フルート)お待たせ致しました。…アキにぃ。」と、アキにぃと呼ばれた、男性客の目の前に

ユウが赤っぽい色のきれいなカクテルを差し出した。

「閉店30分前やろ?

誰もこーへんと思うから、オレ相手やし関西弁でええよ、ユウ。」と言うと、カクテルを一口飲んだ。

「はぁ…。おれ以外も店に人居るからさ。」と、ユウは呆れると

キッチンに残っていたオーナー(カズヒコさん)

「オーナー。お客さんの相手は、おれとマサヤさんでしとくんで、休憩中の3人呼んできて貰えませんかー?」と、言うとオーナー(カズヒコさん)

「…しょうがないな。呼んでくるよ。」と2階に上がって行った。


「なぁ。マサヤくん。ユウが最近変なこと言ってへんかった??」と、アキにぃさん(?)に急に話しかけられ


「変なことですか?」と俺が聞き返すと


「例えば…『Verbotene(フェアボーテン) Früchte(フユリヒテ) ist(イスト), im(イム) Nebel(ネーベル)』とか。」

とあの1ヶ月位前にユウが言っていた謎の言葉を言っていた。


「呼んできたぞ、ユウ。」といいタイミングで、オーナー キングさん ユキコさん マキさん が2階から降りてきた。


「どーも。ユウがお世話になってます。」と、帽子を少し上に持ち上げて顔が見えると、


「…久しぶりやな。」とユキコさんがぼそりと喋ると

「ねぇ~。ユウ、この人だれ?ユキ姉も知り合い?」

「休憩中の俺たち呼び出とは、どういう事だよ?」

と、マキさん キングさんも 不思議がっている。


「すみません。あたしの相棒みんなに、紹介してへんなー。と思ったのと、報告せないけへん事あるんで。」と、聞き慣れない関西弁でユウが話始めた。


「どーも。

Nebel(ネーベル)って言う、脚本・演出家ユニットでユウの相方やってます。 アキラです。よろしく。」と、帽子を脱ぎ現れた男性客は

Nebel 作品の時、ブルーセカンドに舞台演出を付けて居た人だった。


カズヒコさんとユウ以外の全員が状況を、読み込めて無い様な顔をしている。

勿論(もちろん)俺も例外じゃない。



「座長さん以外、みーんな。きょとーんとしてるやん。…お前ずーっと黙っとったん??5年間も。」とアキラさんが言うと


「…しゃーないやろ。マサヤさん来たん、3ヶ月前やで。それまで、座長さんしか知らへんから、黙るも何も無いやん。」と、ユウがため息をついた。


「もう。騙すも何も無いから、言うけど、あたし今日付けで(ココ)辞めさせて貰うわ。」


「なんでだよ!ユウっ!おれたち"Bar pomegranateの仲間"じゃんっ!」と、耐えきれなくなった、マキさんがユウの胸ぐらを掴んだ。


「あたしは、アンタらの事"仲間"なんて、5年間一言も、言ってへんけど??

それに、"仲間"なんて言葉、大嫌いやから。」と、マキさんの手をどかした。


「辞めるゆうて、アキラも居るんやから、関西(向こう)でなんか、やるんやろ?」とイライラしたユキコさんが続けた。


「オレのこと覚えててくれたん? うれしいわー。ユキコママさん。」とアキラさんが言った。

「忘れる訳ないやろ。」と、ユキコさんが返した。


「なぁ。アキラだっけか?? お前なら知ってるんだろ? たまにユウが喋ってた謎の言葉の意味。」

とイライラしたキングさん…いや。トシユキさんが話しかけた。


「『Verbotene(フェアボーテン) Früchte(フユリヒテ) ist(イスト), im(イム)

Nebel(ネーベル)』…ドイツ語で意味は、『禁断の果実は霧の中に』ですよ。トシユキさん。」と、ユウが淡々と説明した。

「…なるほどな。アダムとイブの食べた果実は、ザクロって説もあるから、だろ?ユウ。」


「…ほんまに、トシユキさんは話が早くて助かるわ。アキにぃの飲んでるカクテルは『forbidden(フォビドン) fruit(フルート)』」

「…『禁断の木の実』だろ?」と、

さすがに俺もわかった。

「ご名答です。」とニコリと笑ったユウは、俺の知らないユウだった。

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