鴨精神
Nebeの謎が解けたあの日から数日後の夜。
ある、3人のグループで来ていた、お客さんから
『鴨さんに、この手紙渡して、貰えますか??』と言われ、
鴨さんという人が、
誰なのか分からないけど、とりあえず預かっておくことにした。
宛先には、【鴨精神さんへ】と書いてあった。
明らかに、本名では無いことは確かで、
全く見当もつかない。
そのグループのお客さんは、それぞれドリンクを一杯注文して、帰っていった。
そのころ、
不足した食材を、急遽買い出しに出ていたユウがキッチンへ
戻ってきたので、俺は
「ユウ。これなんだけど…お客さんから『渡しといてほしい』って、言われたんだけど、誰だかしらないんだよ。」と、
【鴨精神さんへ】とかかれた手紙を見せた。
「あぁ…。鴨さんなら居ますよ。ファンレターなら、早く渡さないと!ですね。 呼んでみるとわかりますよ??」とニヤリと笑った。
なにも無ければいいんだけどな…
「ほらほら、渡しましょうよ。大きい声で呼んだら、きっと来てくれますよ。」と言われたので、とりあえず
「鴨さーん。鴨精神さん!! お届けものお預かりしておりますので…」
『キャストまで、お声かけ下さい。』と言い終わる前に
マキさんが急に俺の前に現れた。
「マサヤくっ~ん。それ、ワタシの知り合いのだから~」と手紙を俺の手から取ろうとるすと…
「どうしたんですか?そんなに慌てて。
人気コスプレイヤーの鴨さん??」と、ユウに手紙を奪われてしまった。
「新規のお客さんを、定着させるいいチャンスなんですから、御協力お願い申し上げます。鴨精神さん?」と、ユウが続けると
呆れた様なマキが
「なんでマサヤくんにバラすのっ!…先輩としての威厳がなくなるじゃんっ!」と、少し残念そうな顔をしている。
「へーっ。鴨ちゃんさぁ。
威厳出そうとしてたんだ。ぜっんぜん、出せてないけど。」
と、見覚えのある人がグラスを傾けていた。
「アカネさん。イベントの時はありがとうございました。あの写真、好評でしたよ。」とユウが言ったのを聞いて思い出した。
この人はアカネさん。イベント用グッズの写真を撮ってくれた人だ。
「あの時は、ありがとうございました。」と俺がアカネさんに、言うと
「いやいや。撮るのは趣味半分、仕事半分だから。
やっぱりさぁ。コスプレイヤー撮るのも楽しいけど、
マサヤくんみたいな、俳優さんとかも撮ってて楽しそうだよねー。」とアカネさんが俺の顔をまじまじと見始めた。
「真面目そうだけど、役によっては違う表情とか、撮れそうだし。ねぇー。鴨ちゃーん。オーナーさ今日いないの??」とアカネさんは、飲み終わったカクテル・グラスを指差すと、
「おんなじのもう一杯ちょうだい?」とオーダーをした。
「ギムレットですね?? かしこまりました。
アルコール度数高いんで、あんまり飲み過ぎないでくださいね?」とアカネさんにさらりと、言える辺り慣れなのか、サービスなのか分からないが、ユウの発言には
凄いと純粋に思ってしまう。
「じゃあ、俺作ってくるから。 マキさんも機嫌…なおしてくださいね?」と言うと俺は、キッチンへ戻っていった。




