キングVSユウ 3回戦
「マサヤ様は、キングの物ではありませんし…。」ユウは、やれやれとため息をついた。
「キングは、マサヤ様の指導係ではありませんよね??
それに、この方の事はおれの方がよく知っていますよ?」とニヤリと笑った。
やっぱり。キングさんVSユウ この図式だ…
「だから、なんだって言うんだ? 悪意のある口振りのお前より、マサヤの方がよほど、"マトモな後輩"だよ。」
とキングさんが、嫌味を言うと
「お褒めにあずかり、光栄です。そんな口振りのキングも"マトモな先輩"ではありませんね?」
と、いつもよりある意味白熱した、バトルが繰り広げられている。
口論が続くなか
ユキコさんが、俺の方をみて手招きをしていたので、側にいくと小声で
「…正直言うわ。あの二人が嘘か、本気かは解らへんよ?」と、言うと
びっくりした、俺をよそに
自分の周りに居るお客さんに
「あの喧嘩しとる、阿呆どもは気にせんと…楽しんでってな?」といつものユキコさんに、戻った。
うーん。
本気だったら、大変な事になるな…。
とりあえず、俺は
自分の取ったオーダー品を作るために、キッチンへ戻った。
「オーナー。とりあえず…オーダー品作りますね…」と俺がいうと
「あぁ。そうした方がいいな。 それにしても…アイツらは、やり過ぎだなー。」と、オーダーメモをみながら
笑顔でカクテルを作り始めた。
一通り俺がオーダーを取った物は作り終えたけれど、
まだ、口論は、続いているようだ。
はぁ…。と、俺がため息をつくと
オーナーが「量も多いから、俺も届けに行くぞ。」というと、ほぼカクテルはオーナーがトレーに乗せて運ぶ準備を始めた。
「マサヤは、キングとユウに、これ持ってってやってくれ。」と、
有無を言わさず、カクテルが乗せるはずだったトレーに、
ミネラルウォーターの入った、プラスチックコップを乗せると
フロアへスタスタと、出て行ってしまった…
オーナーが、カクテルを配りながら
お客さんと話はじめるのをみて、俺は少しだけ気合いを入れて、
フロアでバトル中の二人のもとへと急いだ。
二人の前に着くと
「お二人とも…これでも飲んで」と、言って目の前に着いた瞬間に、
キングさんとユウの前で足を引っかけられ、
壮大にコップの中身をぶちまけていた…
幸い、ガラスのコップでは無かったので怪我人は出なかった。
「ふたりに、水かけるなんて、やるね~マサヤくんっ♪」
セーラー服風衣装のニコニコしたマキさんが、やって来くると
「ほんまやな。新人君がこんなに度胸のある奴やって、知らんかったわ。」
呆然と立っていた俺の元にマキさんと、ユキコさんがやってきた。
「いやいや。仲間を止めようと必死に考えたんじゃないか?」
タオルを持って、オーナーがやって来た。
たぶん足を引っかけた犯人は、明らかにこの人だ。
「…だから、プラスチックコップだったんだ…。」と、ボソリと呟くと
オーナーは、
「何か言ったか??マサヤ??」と、なに食わぬ顔で、キングさんと、ユウにタオルを渡した。
「助かったよ…マサヤ。お陰で、頭も冷えた。」と髪の毛を拭いた。
「おれも助かりました。すいません、熱くなって。」
と髪の毛を拭きながらユウも俺に謝った。
俺はちらっと、犯人の方へ目をやると
ニコリと笑いながら、床にこぼした水を拭いている。
「…オーナー、いいですよ。…やりますよ。水ぶちまけたの俺ですから。」
こう言いう雰囲気を作るのは、本当に上手いな…オーナー。
「マサヤは、
1ヶ月でカクテル作りも、簡単なモノは任せられるレベルになった努力家だから、
みんなよろしくな。ほら、マサヤも挨拶しろ。」と、オーナーが俺の方を向いた。
「キッチンが、主になるとは思いますけど…よろしくお願いします。」と、俺がお辞儀すると、
「も~っ!!マサヤくんってマジメっ~♪」
と、脇腹辺りをくすぐられた。




