黄色い声援
開店すると、記念イベントだからか
お客さんもいつもと違ってドレスアップしている女性も中にはいる。
皆さん、自分が馴染みのお客さんを、接客し始めた。
オーナーは、ミーティング通りキッチリ制服を着ているせいか、
「オーナーさん。今日は、一段と格好いいですね。」と俺と同世代のお客さんからの黄色い声援を、浴びながら俺と一緒キッチンに立っている。
キングさんは、と言うと
いつも以上に、本物のホストぽっさが増した衣装で、ドレスアップした女性達の接客をしていて、キングさんの周りだけで見ると、ホストクラブにしか見えない。
「マサヤ。キングの所にオーダー取りに行ってくれ、アイツはあのモードになると、自分でオーダー取らないからな。」とオーナーに言われてキングさんのもとへ行くと
「あぁ。コイツがさっき言ってた、マサヤ。みんな、あんまりいじめてやるなよ? ”オレの大事な”後輩だから、 な?」とおもろに立ち上がり、俺の肩に腕を回した。
「なぁ。オーダー取りに来たんやろ? 新人君。トシ、早ぅしたれや。」と、いつもとは、違い和服のユキコさんが、若干イライラした口調で話かけてきた。
「あぁ。すまない、ユキコ。”オレの大事な”後輩のマサヤを、皆に紹介しようと…ね。 なぁ、マサヤの作ったカクテル、飲んでやってくれるかな? みんな?」と言うとキングさんの周りにいたお客さんは、
次々とオーダーされていった。
「ユキコ様…。おれで良ければ、お嬢様方のオーダー、お取り致しますよ。」と執事の衣装を着たユウが、ユキコさんの前に現れた。
「あぁ。ユウでも、えぇねんけど。アンタは、お客さん放っておいてえぇんか?」とユキコさんがいうと、
「おれの、お嬢様方はそんな事で機嫌を損ねたりしない、優秀な方ばかりですし。」と、お辞儀をすると、
さっきまでユウが座っていた席の周りでは、黄色い声援が上がった。
「それと…。”おれの大事な”マサヤ様を、勝手にキングさんの物と、されるのも心苦しいですから…ね。」と俺の方を向きユウがニコリと笑った。
その笑顔を見た俺は、何度か体験した、嫌な予感を感じ取っていた。




