外道な人間じゃないしな。
「いいや。おれの用事は後回しでも全然いいし、今話しかけると、後々すっごーく怒られそうだし。」と、カウンター席に座ったマキさんは、ニコリ笑った。
「そうそう!!オーナーから、聞いたんだけどこの前、マサヤくんが来た日の店からの奢り分て、ユウ持ちになったって話、本当?」と、
ちょっと楽しそうな風にマキさんは話を切り出した。
「あぁ。アレか…因みに言っておくが…マサヤ君は、払わなくて大丈夫だからな。あれは、"あくまでもユウとマキ"、コイツらの問題だからな。」とトシユキさんが、マキさんとカウンター越しにテーブル席でパソコンに向かっているユウを指さした。
「…なら、いいんですけど…」と俺が言うと
「い~んだよ。気にしなくて♪
おれは、お客様へのサービスでの発言だし。ペナルティーは無し!だよね。」と見るからに、分かりやすいドヤ顔をマキさんはした。
「まぁ、ペナルティーは無しだが…マキお前、イエローカードって所だな。後1回なにかしでかしたら、ペナルティー物だから、気を付けておけよー。」とトシユキさんに、ピシャリと釘を刺されてしょんぼりしている。
マキさんって、本当に感情が豊かというか…忙しい人だなぁ。とふと思ってしまった。
「ペナルティーっていっても、ユウ、1日半位タダ働きする位の金額だしな。ユウもそれ位予想はしてるだろ。」と、言いつつトシユキさんは、バックヤードにあった他の書類をチェックし始めた。
「…それに、新人に初日から給料払わないなんて事、する訳ないだろ??
そんな、外道な人間じゃないしな。」
と、いっているトシユキさんを見て、ちょっとだけ、ここのパワーバランスが分かったような、気がする。
「ちょっと、煩くて集中できないんですけどー??…イエローカードのマキさん??」と、ユウがカウンター席へやって来た。
「後…マキさん。いつものあれ、ロッカーの前に置いてありますから。ちゃんとお持ち帰り下さい。」と一言、言い残すと、またパソコンの置いてあるテーブル席へ戻って行ってしまった。
「ほーら、おれ怒られちゃったじゃん。何もしてないのに!じゃあ、ちょっと2階にいってきまーす」と言ってそそくさと、立ち上がって2階へ行ってしまった。




