似るんだな、教え方が
俺が制服から着替えて、1階へ降りようとすると、トシユキさんとユウの話し声が微かに聞こえた。
「…ユウにカズヒコさんから伝言忘れてたよ。【あの嘘を、これからもつき続けるのか?】だと。」
「…その話ですか…。まぁ、後々カズヒコさんに言わなきゃなぁ…。」
と、パソコンのキーボードを叩く音と一緒に聞こえてきた。
聞こえた内容は、気になるがとりあえず階段を降りた。
「ふたりとも…。どうですか??」と2階から降りて制服姿で、ふたりに聞いてみる事にした。
「いいと思いますよ。如何にも…"バーテンダー役"みたいな、感じが出てて。」と、ユウがニヤニヤとパソコンから、目線を上げ答えた。
「まぁ。お前は見慣れないだろうな? オレは、いいと思うけど。"着なれていない初々しさ"が出てて、お客さんウケはいいと思うぞ。」とニコリと笑われた。
ということは…
「ふたりして…"制服に着られてる"って言いたいんですか?」と俺が言うと
「…そう捉えるなら、それでいいですけど」とユウは、またニヤニヤしながら俺に話しかけた後、
「あぁ~。そうそう。このレシピ集の【ビルド】と【ステア】のレシピがうちのBarでは、メインの作り方なんで…まぁ、来月の7周年までに、100種類中、60種類はマスターしてもらいますよ。」
と、さらっと今後の指導プランを発表し、さっきの分厚いレシピ集を掲げた。
「カズヒコさんに負けず劣らず、スパルタ式で行くのか??
ユウは、カズヒコさんに似るんだな、教え方が。」とさっきよりも、楽しそうな笑顔で、ユウ見た。
「似たくはないですけど。 うちのオーナーが指導役なら、1か月で100種類ですよ。…きっとね。」と、呆れたように言うと、
「開店準備は、トシユキさんに教わって下さい。
あたしは、その間企画書作ってますから。期日までに完成させないと、"キング"になにをやらされるか、わかりませんから。」と、パソコンに向かった。
「分かった。開店準備は、オレが教えるよ。営業中は、お前のサブとして、付かせるからな。営業中は、ビルド位は、マサヤ君にやらせろよ。」とトシユキさんは、渋々返事をした。
「できるだけ、60種類はマスターするように、頑張るよ。さっきから、【ビルド】とか【ステア】って、なんのことだ??」と、さっきから疑問に思っていた事を聞いてみると、
「カクテルの作り方ですよ。
まぁ、簡単に言ってしまうと…"直接グラスに材料を入れてつくる"のが、【ビルド】で、"ミキシング・グラスに材料を入れて手早く混ぜる"のが、【ステア】です。
その他用語も書いてあるんで、暇な時読んでみて下さいよ。随時教えますけど。」と、ユウは俺にレシピ集を手渡した。
「あぁ。わかったよ。」とレシピ集を受けとり、トシユキさんと開店準備に取りかかる事にした。




