"楽しませる為の嘘"
「…カズヒコさんなら…そうだろうな。でも、そんな事させないだろ??指導役が、お前だからな。」と、ニヤリと俺が笑うと
「さーて。それはどうでしょうか??指導役が、"マサヤさんの知ってるあたし"じゃなくて、"Barのおれ"かも知れませんよ??」とまた、いたずらっ子の様な笑顔だ。
「でも実際に、そんな難題は出さないだろ?? そんな、難題を出すのはカズヒコさんだけで、充分だよ。」と、ウーロン茶を飲み干した。
「確かに全く、その通りです。少なからず"おれ"でも"あたし"でも、下戸の人間を上戸にするつもりはありませんから。でも、"おれ"がマサヤさんに甘いと、怒る人が居ますから…ね。…トシユキさん?」と、ユウが言うと
いつの間にか来ていたトシユキさんがコチラをドアの前で立ちながら聞いていた。
「まるでオレが、後輩に優しくないみたいな言い方だな。」と
俺たち二人の座っているテーブル席まで、歩いてきたトシユキさんは俺の肩に手を置くと、
「ONのオレや、ユウは、あまり信じない方がいいかもな?
特に客の前では"楽しませる為の嘘"をと平気でつくからな。何処までが、"嘘"かしっかり見極めろ。…って所だな。まぁ、肩肘張らずに頑張れよ。」
と、ユウ持ってきたバインダーをペラペラと、めくりながら話しては居るが、
どこか真剣なトーンで話すトシユキさんを見て、俺の中で緊張が高まった様な気がした。
「…トシユキさんの方が、タチ悪いですよ? 軽い脅しじゃないですか??あーっ怖っ。
まぁ…。マキさんの"嘘"も気付けない人ですからね、マサヤさんは。気を付けて下さいね? 特に
トシユキさんにはね。」と、わざと怖がって喋っているが、きっとこれが、ユウとトシユキさんの日常なんだな。と感心してしまった。
「まぁ。マサヤ君を怖がらせても、何も始まらないからな。ちょっと待っててくれ。」と、言うと2階へ上がって行くと、ユウがポツリと
「あぁやって、言ってますけどトシユキさん嬉しいんですよ。まともな後輩が入ってくれる事がね。」と言い終わると、トシユキさんが2階から大きめの紙袋を持って戻ってきた。
「…やっと気づいたか。ユウがまともな後輩じゃないって、事が。マサヤ君、コレ。ここの制服サイズは合ってると思うけど、1回着てみてくれるか??2階の仮眠室の横にある、更衣室にマサヤ君用のロッカーも準備してあるから。」と、
俺へ制服の入った紙袋を手渡した。
「それと…ユウ。お前は、ホームページの更新と、来月の7周年イベントの企画、カズヒコさんに出す用の企画案まとめとけよ。
早急にな?」と、テキパキと指示を出た。
「りょーかい。」と、さっき片付けたリュックの中から、パソコンを取り出し作業をはじめた、ユウをみて俺は2階の更衣室へ向かう為に、2階へ上がる階段を登って行った。




