レアキャラみたいな人
「いってらっしゃい。」と、俺たち3人はユウを見送った。
「で、トシユキさん。マサヤくんどうするつもり??」と、マキさんがトシユキさんに問いかけた。
「そういうのは、お前とかユウの専門だろ? オレの範囲内じゃないからな。」とため息をついた。
「何の話ですか??」と、俺が聞くと
「あぁ。Barでのキャラクター設定とか、ニックネーム的なもの。素で接客するより、キャラクターがあった方が、分りやすいし、それ目当ての客が来るから。」とマキさんが説明口調で教えてくれた。
「…って、キングがはじめの頃考えてくれたんだよね~♪」と、仕事モードのマキさんに変わった。
「まぁ。前の仕事が、そういうのを考えないと、いけない仕事だったからな。」
「流石、元 客を喜ばせるプロ♪」
と、マキさんがトシユキさんの肩に手を置いた。
「オレだけじゃないだろ。現にこのBar には、現役バリバリの、ユキコだって居るだろ?
それに、マサヤ君だって、役者だ。観ている人の心を掴むのは、上手い筈だから関係ないよ。」と肩に置かれた手を払いのけた。
「そういえば、ユキコさんって昨日の夕方も居ないですけど、今日も来ないんですか?」と、さっきから気になっていた質問をぶつけてみた。
「あぁ。そう言う話は本人に聞いた方が早いけど、ユキコは中々来ないからね。」と、ユウから貰ったワインを注ぎながら、トシユキさんは答えた。
「ユキコはこの時間には中々現れない、レアキャラみたいな人だから。」と、わざとらしくため息つく。
「まぁ。そう言う捉え方の方が、解るまでは楽しいから、そう言う事にしておいたらいいよ。」とニコリとマキさんも、笑った。
「…まぁ。良くわかりませんけど、お忙しい方なんですね。」と俺が言うと
ガチャリとBarのドアが開いた。
「…トシ。マキ。ウチのおらへん所で、変な話してへんやろうな??」と、少し不機嫌そうな、ユキコさんが立っていた。
「…トシ。水くれへん??
それに、不思議そうな顔せんでええって、新人君。君やろ??ウチをここに呼んだん」と言いながら、カウンターの椅子に腰かけた。
「おう。お前は、相変わらず夜型だな。…それに、お前を呼んだのはマサヤ君じゃない。まして、オレでもない。」と、氷の入ったグラスに水を注ぎはじめた。
「さーてと、おれは帰りますかね?ユキ姉も、来たことだし。」と、カウンター席を離れようとしたが…
「新人君でも、トシでもないのか。誰やろうなー。そんな面倒な事するアホ、おったか。なぁ?マキ??」と、マキさんに向かって話しかけた。
「新人君って、君やったんや。昨日おったよな? このマキに絡まれとった子か。」と、マキさんを指差した。
「はい、水。そう。カズヒコさんの所の劇団の子。昨日は見学ついでに飲みに来てああなった。カズヒコさんがまた…。ね。」と、氷の入ったグラスをユキコさんの前へ置いた。
「まぁ。アイツの事やから、なんか企んでるんやろ? トシなんか、知ってるん違う?」と、グラスを揺らしながら問いかけた。
「流石に知らないよ。この子が来るって事すら、知らなかったから。一応自己紹介しておきなよ。マサヤ君。」と、急に話をふられた。
「あっ…。マサヤです。今日からここにお世話になります。
料理とか、作るの好きなんで、なんか食べたい物有ったら言って下さい。…基本的にはパスタ系中心ですけど。」我ながらたどたどしい挨拶に笑えてくる。
「緊張せんで、ええよ。まぁ。ウチあんまりここ入ってへんから、会う機会は他のキャストより、少ないやろうけど、よろしく。」




