謎と赤
「あはは。あの人とマサヤ君は、付き合い長いもんな。オレで話せることなら、聞いてくれて構わないよ。」
とトシユキさんは、ニコリと笑いウィスキーを飲んだ。
「俺、10年位劇団に居るんですけど、Bar経営してるなんて、全く知らなかったんですよ。いつからBar営業してるんですか??」
「言って無かったのか、オーナー。Barは、来月丸7年。オレと、ユキコ マキ
オーナーが、初期から。5年前からユウが加入して…って、感じだな。」
と、ウィスキーを飲み干した。
「そんなに、前からやってるんですね。…やっぱり謎なんですよね。カズヒコさんって。ずっと、何かしらの謎は有るんですよね。」と、ぽっりと言うと
「まぁ。あの人以外も、マサヤ君にとっては謎が多いだろうね。ここのキャストは。」と、カウンターを立ち、グラスに2杯めのウィスキーを注いだ。
「そうなんですよ。それに、1日で色々起こりすぎて、頭の中で整理出来てなくて…。」
「整理出来てなくて当たり前ですよ。キャパオーバー&二日酔い ですからね。」と、出来上がったリゾットを持ったユウが、キッチンスペースから現れた。
「トシユキさん。お待たせしました。チーズリゾットです。」と、できたてのリゾットがカウンターに並んだ。
「前にオレが食べた時より、見た目はいいな。…あっ。そうだ、マキ!ワインセラーから、ユウの私物の赤ワイン持ってきてくれるか??」とトシユキさんは、ニヤリと笑った。
「りょーかいっ。ワイングラスも持ってくから!」と、グラスを片付けていたマキさんは、嬉しそうな返事を返した。
「はぁ…。自分の私物もあるでしょ。なんで、あたしのなんですか…。って言うか、コリンズ・グラスの場所が解らない人が、あたしの赤の場所解るんですかっ!!」と、若干怒っている。
「トシユキさん、"ユウの赤"持ってきましたよ。」ニコリと、マキさんがユウに笑いかけた。
「ありがとう。マキ。やっぱり、上手いチーズリゾットには、赤が合うからな。」と、ワインをグラスに注ぎ始めた。
「お褒めにあずかり光栄です…。で・す・が!騙されませんからね!」と、テキパキと食器を片付け始める為に、キッチンスペースへ向かった。
「まぁ。それほど美味しかったって、事じゃん。」と、悪びれる様子なくマキさんは、笑っている。
「…ご馳走さま。ユウ。お前そういえば、2時から予定あるって、言って無かったか??」と、トシユキさんはキッチンスペースに、食べ終わった皿を置くと腕時計を見た。
「…えっ!? 今何時ですか??」と、洗い物をしている手を休めた。
「1時半。場所が遠ければ、洗い物終わってから行くとなると…。確実に遅刻だな。」と、ユウの赤ワインを飲みながら、答ている。
「時間は、大丈夫ですけど…。いいですよ…気に入ったんなら、その赤あげます。」と、腰エプロンを外しながら、キッチンスペースから出てきた。
「ありがと。後、マサヤ君の制服ついでに、受け取って来てくれないか?」
と、メモに何かを書きはじめた。
「メモに書いてある所へ言って、オレの名前を言えば、受け取れるハズだ。」と、メモをユウに渡した。
「しょーがないな。いいですよ。ついでに取りに行ってきます。業務は、帰ってきたらやりますから。」
と、テーブル席に置いてあったリュックを背負って出掛ける準備をした。
「じゃ。いってきます。」