ようこそBar pomegranateへ
「いらっしゃいませ。Bar pomegranateへ」
なんで、俺はここで働いてるんだろう?
俺はマサヤ 俳優を目指して10年。
パッとせず 劇団俳優をやっている。
なんでそんな俺が、Barで働いているか…。
あれは1ヶ月前
俺は、稽古の後の座長に頼まれ あるものを届ける為に歓楽街にひっそりと佇むBar pomegranateの扉の前に居た。
「座長も、なんでBarなんかに届け物なんだ??」
座長は、「明日の夕方店にいる、適当な人にこの箱を渡せ」って、言うだけで何も教えてくれなかった。
そして、俺はBarの扉を開けた。
「いらっしゃいませ。Bar pomegranateへ
って、言いたい所だが、まだオープンの時間には早いんでね。」
いかにも、ベテランホストの様な眼鏡の男が話しかけて来た。
「キングっー♪お客様?」少し声の低めなロングヘアの女の子が
ひょこっと、店の奥から顔を出した。
「いや。客ではなくて、俺は届け物を…」と、キングと呼ばれた人に箱を手渡した。
「あっ。ありがとう。宛先は…『劇団ブルーセカンド 座長より』か。またあの人は」ニコリと笑って、荷物を開けはじめた。
「それでは、俺はこれで…。」と言って立ち去ろうとしたが
「きっと、君の所の座長さんがこれを君に託したのは、何か理由があるとおもうんだけどね…??」と笑顔でカウンターの席へ案内された。
「マキ、ユウ呼んできてくれないか?? きっと、2階で寝てると思うから。ユキコは、後で来るだろうから、大丈夫だけど。」
マキと呼ばれた女の子は、「えーっ??ユウって、寝起きテンションひくいんだもーん。」と渋っている様だ。
「えーっ??じゃないよ。ほら行ってきて。
あぁ。ごめんな。オレの勘だけど、君への手紙があると思うんだよね。」と、俺の方へ向き直った。
「俺への手紙ですか!?でも、座長もなんでそんなことするんですかね?」
イマイチ、ここの人と座長の関連性が掴めない。
「まぁまぁ。君も、ユウが来れば何となく分かると思うよ。」
そう5分ほど話していると、マキさんとだぼっとしたパーカーを着て、フードを被った20代位の男の子が降りてきた。
「ユウ。この人がブルーセカンドの座長さんから、荷物を届けてくれた人なんだが、見覚えあるだろ??」俺に見覚えがある??どういう事だろう。
「ん゛?あっ。どーも。」
ん?男の子にしては、声が高い…??
「センパイ。忘れたんすか??おれのこと。」ニヤリと笑った笑顔で思い出した。
「そうだ、思い出した!高校生で劇団に居たユウ!」
劇団で男装を得意としていた、当時女子高生だったユウだ。
「マキさんが、イケメンが来てるー♪って、うるさいから誰かと思いましたけど…」
それにしても、喋らなかったら男の子に見えるな。
「ユウ。君もここのお店の人なのか?」
「はい。オーナーのご厚意で。接客は好きなんで。演技ではごはん食べて行けませんでしたけど、ここで
役立ってますから。」
と、喋って懐かしんでいると、
「ユウー。知り合いなんだー。いいなー!」とマキさんが、割って入ってきた。
「はいはい。解りましたって。で、センパイは、お届け物を座長からここへ持ってこい!って言われてここに居るって、事ですよね?キング。」マキさんを、あしらった。いつもの事なのだろう。慣れているようだ。
「さすがだね。『座長』との付き合いがオレ達より長いからね」と笑った。
そして、名前の入った箱を1人づつに渡している。
「ユキコの分は後で渡すとして…。この『マサヤへ』って手紙とこの箱は君へのかな?ほら、オレの勘当たってたろ?」
と俺へ箱と手紙を渡した。
手紙の封筒には、『すぐ読むように!』と赤字で書いてある。
こう言茶目っ気は、10年劇団に居ても謎だ。
封を開け手紙を読むと、そこには座長の字でこう書いてあった。
『マサヤへ 配達有り難う。これを読んでいると言うことは、ちゃんとBarまで荷物を届けたと言うことだな。このBarで働いてくれないか??
ちょうど人間観察も出来るだろ??詳しくは、後で話すからな(^-^) 座長 カズヒコより』
「笑顔マークって…。それに、どういう事だよ。このBarで急に働けって…」と俺が理解できずに居ると2階から、見覚えのある1人の男性が降りてきた…。