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五月蠅い女と策2

「あ、それ知ってる。たいていはちょっとおとなしめな男女一組ぐらいが残るよね……」

「そうだ。少なくとも馬鹿っぽい女や、冷静に物事を考えて生き残ろうとするやつはすぐ死ぬんだ」


 そういって馬鹿らしくなって、俺は藤崎と映画トークをやめた。これは映画や漫画の話だ。現実には積極性のあるモノこそが、ゴールに向かう確率が一番高いものだ。それは当然の事だと、俺の経験がかってに語る。


「で、いまから外に出る前に、ある程度準備をしようと思う。しかし、準備をしようにも俺は疲れた。だから今日は寝よう。お前がここに来たとき何時だったかは知らんが、お前も寝てくれると助かる」

「なんで?」


 当たり前だろう。そういいたいのをこらえて、俺は藤崎に寝袋を放り投げる。


「今寝ておかないと、外に出たときお前だけが眠くなったら困るだろ。まあ、場合によっては見張りをしながら交互に眠るという手もあるが、それはお前がどうしても眠れなかった場合にしたい。まあ、ようは足並みをそろえようってことだ」


 そういうと、藤崎は不審そうに俺を見る。


「寝てもいいけど、あなたが変な事をしないっていう保障が欲しいわ」

「それはこっちのセリフだ。お前の事はまだ完全に信用していない。お前が俺をこんな目に合わせた側の人間でないという保障がない。それを保証するなら、俺の手に手錠をかけてもいいぞ」


 交渉は決裂。しかしおれの睡魔はどうしようもないで、おれは彼女に背を向けると、おやすみもいわずに眠りについた……



 次の日、そういっていいのか俺に解らないが、次に目を覚ました時、藤崎も眠っていた。いったい何時間たったのか。俺は携帯電話を確認する。


「7時か。眠るときに見たのが1時だったから、6時間睡眠か。まあこんなもんだろ」


 おれは彼女が起きるまでに、準備を進めようと決めた。


「雪用の迷彩柄のリュックサック、27センチの自衛隊仕様の白いミリタリーブーツ。あとは……」


 そういって俺は以下の物を壁から出すように指示した。


・リュックサック

・ミリタリーブーツ

・各種着替

・サバイバルナイフ

・ペットボトルの飲料水

・アーミーナイフ(10種)

・催涙スプレー

・自殺用の青酸カリ


 服装は全て白色で揃えた。この部屋の壁の色が一面真っ白な所を見ると、この壁の外も同じである可能性が高いからだ。ブーツもリュックもみんな白色。

 次に、サバイバルナイフや食料は、念のためというよりはこれから先の状況が分からないためだ。この先俺の言うことを聞く魔法のランプのようなこの壁があるとは限らない。そして自殺用の青酸カリ。これは外せない。餓死は嫌だ。それは一人の時によくわかったことだ。


「あれ、起きてたの?その荷物は何?」


 藤崎が起きてきた。もし俺が彼女の立場なら、決して眠りはしないが、まあこの際はどうでもよい。

 おれは彼女に準備した装備を説明すると服のサイズを聞き、彼女の分を見繕う。


「へ~、真っ白ってなんかやだね」

「ピンクにしてやろうか?お前がおとりになるかもしれない」

「何?おとりとかって何よ。外にエイリアンでもいるっていうの?」

「いや、エイリアンの目は赤外線じゃなかったか、ピンクは関係ない」


 この映画オタクと彼女に罵られたが、俺は構わない。


「それで、お前はあと必要なものがないか具体的に言ってくれ」


 そういうと、藤崎は装備品を一通り眺めてから頷く。


「大まかにはこれでいいんじゃない?あとはそうね、酸素ボンベ・銃・爆弾かな」

「酸素ボンベだ?」

「そう酸素ボンベ。あの口に着けるタイプの奴。もしかしたら外には酸素すらないかもしれないでしょ?」

 

 そういわれれば確かにそうだ。俺はそのことに気付かなかった。自殺する暇もなく、一瞬にして空気がなくなり、地獄の1分半を味わう可能性もあったのだ。


「じゃあ酸素ボンベは出そう。後はそうだな、銃や爆弾は具体的な名前が思いつかなかったんだ」

「じゃあ、銃は……私もよく知らないけど、デザートイーグルって銃が強そうだった。爆弾はC4ね。これも使い方わからないけど」


 デザートイーグル。確かとても大きな拳銃の名前だ。中肉中背の俺に撃てるだろうか。C4もおなじで、おれはそれが爆発するシーンは良く知っているが、具体的に何をどうすればいいのかがわからない。


「あれだ、じゃあ手榴弾は?」

「それも駄目だ。具体的に手榴弾の名称は知らないか?多少古いのでもいいから」

「そんなこと女の子に聞かないでよ。銃撃つゲームとか男は好きでしょ?」


 そういわれれば、俺はそういうゲームをしたことがある。


「そうか、じゃあAK47寄こせ!!」


 俺がそういうと、ゲームの中で見慣れたデザインの、気のグリップがついた武骨なライフルが現れた。


「出来るじゃん」

「いや、まだだ。AK47と、弾の詰まった予備マガジンを10個くれ!」


 そういって俺は銃を取り出す。ゲームでは無限に近い弾が手に入ったが、現実ではこれが一番大事だ。


「へー、そうよね。弾は大事よね。あとはそうね~って、今思い出したんだけど、昨日みたいにどこかの正式採用の~ってつけて銃とか爆弾の名前言えばいいんじゃない?」


 そういえばそうだ。俺はまあしても気づかなかった。才女が欲しいと言ってよかった。

 そう俺はこの状況を作り出した、くそったれの神に感謝する。藤崎の脳みそはホト晩寝たせいか回転が速い。


「そうだな、その通りだ。じゃアメリカ軍の正式採用の装備をだせ」


 俺たちはアメリカ軍の装備に身を包み、各種調整をした後に昼食をとる。

 おれは杵屋のかつ丼ダブル。藤崎はイクラ丼。最後の晩餐になるかもしれニア料理だ。


「じゃあ行くぞ。いいな?」

「OK。もう悔いはないわ」


 藤崎がそういったのを確認し、俺は扉を開ける魔法の言葉を唱える。


「この部屋の出口に通じる扉を寄こせ!!」

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