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五月蠅い女と策

「と、言うわけなんだ」


 俺は目覚めてからの事をすべて語った。

 もちろん彼女に服をよこすよう、壁に命令してからだ。


「とはいっても、全然信用出来ません」

「別に信用しないなら、信用しないでも良いよ」


 そういって俺は紙に鉛筆で色々書こうと必死になっている。こうして神にでも書けば、もしかしたら現状の打開策が出るかもしれない。そう俺のゴーストがささやいているのだ。


「そういえばこの部屋ってトイレないんですね……」


 俺は彼女の言うことは基本的に反応しない。なぜならば彼女は覚醒時、俺を変態だと思い込んで、いきなりひっかいてきたからだ。人間の第一印象は3分で決まるとはよく言ったものだ。

 俺は一瞬でこの女が嫌いになった。


「ねえ、聞いてます~?」


 自分の事しか考えないこの女に、俺と何かを同じ呼び出す能力がなかったことを、神に感謝するべきだろう。


「帰りたいよ~出してえええ!」

「五月蠅い!!考えてるんだ。静かにしてくれ。わめくだの壁に殴り掛かるだのは、12時間ほど前に俺がやりつくした」


 そういうと、女はそのまま言葉を発さなくなる。

 そう思えたが、彼女はまたすぐに会話を始めた。話していないと発狂する程、精神が弱いのだ。こうしてみると、俺のあの錯乱具合はまだましだったと言えるだろう。


「ところでぇ~名前は何ですか?」

「……俺は、甘野辺慶介(あまのべけいすけ)。大事なことはそれしか今は思い出せない。最後の記憶はS市のW町3丁目ににある家で、一人で酒を飲んでいた。それ以外には何も思い出せない。家族構成とか、仕事とか全部。ただ、映画が好きだったってことは覚えてる。映画ファンだ。この状況も映画に例えようと頭がしているんでな」

「まともで良かった。貴方当分口きいてくれないから、おかしな人かと思った。」


 そういうと、不作法にも彼女は四つん這いの状態で、俺の間合いに入ってくる。俺の間合い。すなわち、俺の首を絞めて殺したり、俺が相手の首を絞めて殺したりできる距離だ。


「それ以上近づくな」

「なんで?」

「間合いに入ってる。気分が悪い」


 そういって初めて、女は俺から一歩身を引く。馬鹿め。


「馬鹿め」


 しまった、つい言葉に出ていしまった。注意していたが独り言病はあの数時間で随分と進行したらしい。


「馬鹿って何よ。この状況で馬鹿も何もないわよ!」

「五月蠅い。だからそれを考えてるって言ってるだろ」

 

 そういいながら、俺はひとまずこれからのことを考える。今までの流れから、このまま自らが出した糞に溺れて死ぬという終わりは想像がつかない。ここまでおぜん立てをしたならば、そう、きっともっと大掛かりな仕掛けで殺すはずだ。

 おれはそうおもって、次に壁から出すものを決めた。


壁から出すもの一覧

・方位磁石

・携帯電話

・寝袋二つ

・簡易トイレ


そう、ひとまずこれだけあればいいはずだ。後は女の要望に従って、最低限の食料を補給しつつ、次の手を考えなくてはいけない。


「アメリカ軍正式採用の方位磁石、EU社製の携帯電話、ボッズの寝袋ふたつ、それと簡易式のトイレとトイレットペーパー寄こせ!!」


 俺がそういうと、要求した品が次々に壁から出て来る。


「へ~、そうやって私も出てきたんだ」

「この中の物は自由に使ってくれ。ただ近い将来自分の糞で溺れ死ぬのが嫌なら、新陳代謝は最低限にとどめておくことを進める」


 そういうと、女は一瞬絶望そのものといった顔をするが、以外にも覚悟を決めたのか、顔を上げて再び話しかけてきた。


「それで、私の名前は藤崎麻衣子。藤崎って呼んで。職業は大阪の化粧品メーカーのOL。24歳。独身」

「あと才女で彼氏なしだろ。俺がそういって呼んだんだからな」

「……キモッ」


 あからさまに侮蔑の眼差し。俺はそれを無視して藤崎に質問する。心理戦など糞くらえだ。


「お前の最後の記憶を言ってみろ。何か変な事はなかったか?」

「さあ、知らない。最後の記憶は会社の地下の資料室に資料を取りに行って、ドアを開けたところまでしかない」

「十分だ」


 すなわち、俺と彼女の共通点は、この場所に来るとき一人だったということ。そして、認識する暇もなくこの場所に連れてこられたということだ。そう考えると、前後の記憶がないのは、もしかすると酒に何か毒が入っていて、俺の脳の記憶をつかさどる部分が損傷した可能性もある。


「で、甘野辺さん。何かいい案は思いついたの?」

「一応はある。が、リスクも大きい」


 そう、俺が今悩んでいるのはそれだ。

 きっとこの扉は、出口を寄こせ。そう言ったら出口をくれるだろう。しかし、俺の自宅につながった出口を寄こせというと、反応するだろうか。

 それとももしくは、この悪巧みの黒幕を寄こせと言ったら、張本人が現れたりしないものだろうか。


「ちょっと~、その案ってなに?」

「それはな、取り敢えず次に進むことだ。しかしその次に何があるかわからない。ホラー映画ならこの後、何人かのグループに会って、そのグループの皆に黒幕を名乗る人物から接触がある。それからは各種映画の施行に合わせて、きっと残虐な行為が始まる。で、生き残るのはゼロか、もしくわ数人って寸法だ」

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