第1章・・・早朝の草原
気が付くと、朝になっていた。
「今日はよく眠れた。」と体を起こそうとするが何か変だ。
いつものベットではなく、芝生の上に寝ている。
いや、人工的な芝生というより自然にできた草原といったところだろうか。
ふと自分の体を見ると、いつもの寝巻ではなく、麻でできた着物を着ていた。
一瞬訳が分からなくなったが、とりあえず立ってあたりを見渡した。
見渡す限り草しか見えない。かなりの大草原だろう。
何も解らないまま、歩いてみた。裸足だったが、足元の草は柔らかくて、全く痛くない。
しばらくして、あることに気付いた。
見渡す限りの大草原、早朝なのに日が照りつけている中で何も考えずに歩く。
そうだ、私が書いている小説の冒頭部分と同じだ。
だとすると、30分ほど歩けば・・・
思った通り草が途切れ途切れになり、人工的に作っただろうコンクリートで
舗装された道にでてきた。大草原などと感じたが、それは中にいるとき
に錯覚するだけで、本当は30分もすれば外にでられるのだ。
「そこの方!」
急に横から声をかけられた。
「こんなところで何をしていらっしゃる」
声の主からの視線が感じられる。最初は私の顔を見ていたようだが、
そのうちに着ているものへと視線が移る。
「しかも、そんな恰好でどうしたのです?」
振り向くと、そこには見覚えのある顔があった。
見覚えのある?こんな人に会った記憶は一度も無いはずだが・・・
そうか、この人も小説に登場する人物だ。
今、私の目の前に毎日のように想像し、描いていた人物が立っている。