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第001話 雇われヒーロー

「んんー、……やっと定時か」


 伸びをしてから左腕に装着しているデバイスに目をやって時間を確認した。


 働いて給料を貰っている身だ、就業時間内はキッチリ働くがそれも定時まで、サービス残業なんかお断りだ。


 僕の仕事はハードだけど会社に戻らずに直帰出来るのは気に入っている。


 会社に報告しなければならない事は就業中にデバイスを使って報告済みだ。


 このデバイスっていうのは、超高機能のパソコンの様なマシンをスマートフォンサイズにして腕にくっつけていると思ってもらえば大体合ってると思う。


 便利な時代になったもんだよな、このデバイスは会社の備品だけど僕専用で、僕の身体とリンクしている。僕以外には使えない優れ物だ。それに様々な機能が付いていてホログラムで浮かび上がった相手と会話出来るし、荷物などを収納しておく機能も備えてある。頑丈なのも嬉しい。


 まぁ僕の仕事道具の話はもういいだろう。他にも便利な機能はあるが、またおいおい説明していこう。って誰に説明してんだ。僕は知ってるんだから、こんな説明今更だな、さっさと家に帰って撮り溜めてた映画見ながら一杯やろっと。


 帰宅途中でコンビニに寄って第三のビールとスルメを買い、今日の晩飯の事を考えてた時に、いきなりデバイスが甲高い音を鳴らし始めた。


「緊急指令、緊急指令、レッドさん聞こえますか?こちら指令室です」


 うわ、帰宅途中での呼び出し……かなり萎える。


 気が付かない振りでなんとかならないかと思ったがデバイスからの音がかなり大きいので、近くを歩いていた帰宅途中のサラリーマン達の視線を集めてしまっている。


 音を少しでも小さくしようと無駄な抵抗だとは分かりつつもデバイスを手で包み込んでギュッと押さえ音を遮断してみた。少しはマシになっただろうか。


 しばらくそうしていると指令室の方で動きがあった。


「レッドさん! 聞こえているのは分かってるんですよ! わかりました! 特例で時間外手当てを付けますから――」


「はい、こちらレッド! 今まで電波状況が悪かった様でしたが、たった今回復した模様です!」


「レッドさん、頼みますよ……あなた仮にもヒーローでしょう」


「いやいや、何を言っているのかわかりませんが、あえて言うならば、僕がヒーローなのは勤務時間内だけですよ、時間外はただの三十路のおっさんです」


「はぁ……夢も希望もありませんね。こんな話、世間のちびっ子達には聞かせられませんよ」


「まぁ聴く事ないから平気でしょう。というかそもそもなんで僕なんですか? 後少しで家に着きそうなんですけど、僕じゃなくてもグリーンもブルーもイエローだって居るでしょう。そちらに行ってもらった方が良いと思いますけど」


「グリーンさんは別件の怪人の討伐に既に向かってもらってますし、ブルーさんは貧血で、イエローさんは黄色くてスパイシーな食べ物の食べ過ぎでダウンしてます。もっと言えばブラックさんは新婚旅行で初めてのベガスを満喫していますし、ピンクさんは合コンです」


「おいいいぃ! グリーン以外ろくなやついないな! それにブラックはいつの間に式挙げたんだよ! 僕呼ばれてねぇよ! というかピンクは呼び出せよ!」


「いえ、いわゆる女の戦場というやつでして」


「いやだからなに? 全然うまいこと言ってないよ。僕だってこれから一人で家飲みという男の戦場がだねぇ――」


「はい、今回の怪人の出現した場所ですね。レッドさんのアパート裏の裏山に現れました」


「って聞けよっ! そんな話きいてねぇのに勝手に話出しちゃうし、僕のアパート裏の裏山って近っ! なんでそんな所に現れるんだよ、もっと他に街中とかあるでしょうが」


「レッドさん急いだ方がよろしいかと思われます。たった今、映像が入ってきました。現れた怪人は、枯葉に火打石的な役割を果たす牙でせっせと火を点け始めています。このままだとレッドさんのアパートまで……」


「ノオオオオオォォー! こうしちゃおれん、待ってろよ、僕の部屋、僕のパソコン! 僕、本気だす! 展開からの~、選択変身ッ【象のお面】、時間外特別手当、色付けてくださいねー」


 展開の掛け声とともに僕を中心として周りに様々な、お面が広がる。まぁこれ、自分にしか見えないらしいんだけどね。その中から象のお面を選んで顔にくっつけて選択変身と叫んだ。


 こうする事でお面に描かれている絵柄の力を自分の物とし変身できるのだ。条件さえ満たせば、新たに自分でお面を製作する事も可能だ。


 ちなみに、今回は象、でも象そのまんまって訳じゃなくて、人間ベースの象だ。客観的に言うと、耳がデカい垂れ耳で、肌がゴツゴツで、鼻が異様に太くて長い二足歩行の厳ついつぶらな目をしたおっさんになっちゃった訳だ。全体的に産毛も生えてます。たまに僕が怪人と間違えられちゃう事もある。もう僕も慣れたよ。


 お面によって強さは様々だが、変身していない状態より弱くなってしまうという事はない。経験上ね。


 さて、こんな事をしている間にも、僕の家がピンチだ、待ってろ! パソコンの中のお宝達よ、今ゆくぞ! 僕はそう叫びながら、先ほど買った第三のビールとスルメをデバイスに収納した。当然帰ったら飲むんだ。


 変身して増えた体重の所為で機敏な動きは全く出来ないが、ドスドスと足音を響かせながら目一杯の速さで裏山に急いだ。途中で、着いてから変身したら良かったのでは? と気が付いたが、気が付かなかった事にした。なんか恥ずかしかったから……。


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