朝②
朝食の片付けが終わると、私は国王と王子を起こしにいく。
国王はすぐに起きて身支度をしてくれるのだが、王子はそうもいかない。朝が弱く、2~3回叩かないと起きてくれないのだ。
そして、起きたとしてもボーッとしたままで、私が服を出したり洗面台に立たせたりしなければならない。
その作業は、苦ではないが面倒なものだ。憂鬱ではないのだが、中途半端に重たい気分になる。
「よし」
小さく気合を入れ、王子の部屋に入と、いつも通り、カーテンのかかった真っ暗な部屋はきちんと整理されていた。
部屋の隅にピタリとつけられたベッドを無視し、私はまず窓へといく。
身長をはるかに越し、綺麗な細工をされた窓は眺めているだけで楽しい。シャッと小気味いい音を響かせて黒いカーテンを開けると、今日も青空が綺麗だった。
「王子、朝ですよ。起きましょう」
ベッドに近づき、小さく揺さぶってみても、反応はない。
これで起きてくれないものかと毎回思うのだが、当然王子は起きない。布団の中のふくらみが微塵も動きそうにないのを確認し、王子を殴る心構えをする。
いくら毎朝のことだからといって、緊張しないわけがないのだ。これでも私の主なのだから。
いくらか手加減をしつつも殴って起こし、王子を食堂へと連れていく。そして食事の用意をし、食べ終わった皿からどんどん片付けて行き、早くに城へと出勤してくる大臣達を軽くもてなす。
これが意外と重労働。大きくて綺麗な皿ほど重たいし、小皿も含めると枚数がかなりの数になってしまうのだ。
そんな朝の一番忙しい時間をやり過ごすと、少しだけ平穏な時間が戻る。
アンは国王や大臣の仕事場で飲み物や軽食を振る舞い、私は王子が黒魔術学校へ行ったのを確認した後に洗濯物を片付ける。
一人になると、私はいつも心細くなる。
例え忙しくても、大勢の中で仕事する方が楽しい。一人になるのは、性に合わない。