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もしも  作者: 空猫月
8/51

朝①

 私の一日は、朝の6時から始まる。

 服を着替え、顔を洗い、鏡の前に立ち、身支度をするのだ。


 鏡の中の私はいつ見ても別人のようで、その変な感じに未だ慣れない。

 鏡台の上に出しっぱなしにしているリボンで髪をまとめると、私は『龍』から『リュート』になる。


 何と言うか、気合が入るのだ。よし、今日も頑張ろう。そう思える。


 気合が入れば、私は部屋を出て食事に向かう。朝食をアンと食べるためだ。

 私は毎日三食をアンと食べる。なぜなら、国王と王子が食べている時、私たちは準備と片付けに追われるから。


 アンは食事係で私は家政婦だけれど、仕事はあまり分けられていない。


 二人だけで国王と王子の身の回りの世話と、仕事にくる大臣たちの昼食の準備をしなければならない。

 結構ハードな仕事を私が来る前には一人でこなしていたというアンは、とても強いのだと思う。私だったら、こんな大変な仕事を最後までやり遂げられない。絶対に途中で投げ出してしまう。

 やっぱりアンは、すごい。


 もぐもぐと朝食を頬張っている時、必ずアンは私をじっと見つめている。

「何」

 そう聞いてみても、

「いや、なんでもない」

 と答えるだけ。でもたまに気が向いた時、アンは決まってこういう。

「リュートは美味しそうに食べるね。こっちまで幸せになってくるよ」

 と。


 何がどうなってそういう答えが導き出されているかは不明だが、アンが幸せそうなので私はあえて何も言わない。

 私を眺めるアンを観察していると、いつの間にか私はご飯を食べ終えている。


 そして言うのだ。

「片付けるから、早く食べてね」

 それを合図にして、アンはあたふたとご飯を口に詰め込みだす。そして、ご飯を食べ終えると私に向かって

「今日の昼食は何にしようか」

 と問う。


 いつもいつも、同じ。私がその問いにきちんと答えるか答えないかは、私の気分しだいなのに。自分で考えた方が早いこと、知らないわけないのに。


 なんだかんだいってこの人も寂しいのだと、最近思えるようになった。


 この城に住み込みで働いているのだから、家族はいないであろう。もちろん、私みたいに家族と離れている可能性だってあるけれど、こんな豊かな国で人身売買が起こるだろうか。


 でもなんとなく、今はそこまで踏み込めない。

 私にできるのは、彼女の前で笑顔を絶やさないことだ。


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