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失神
「お前、王子を逃がしたね!?」
鬼のような顔をして、レイチェルさんがやってきた。
「殺すといっただろう?それなのに逃がしたね!?お前はおとりかい?だったら殺してやろうか!!」
胸倉をつかまれ、揺さぶられる。瞳に狂気が見えた気がして、ぶるりと身震いがきた。
ちらりと窓の方を見れば、いつの間にか戻ってきていたラナがのんきに毛づくろいをしている。
「お前は…、王子は…」
レイチェルさんはもはや文章になっていない言葉を吐き続け、ぎりぎりと私の襟元を締め上げる。
「レイチェル、さん」
息すらも苦しくなり、すこしだけ呼びかける。
がしかし、
「っう」
無言でさらに首を絞められ、呼吸すらも止められる。
「殺してやる…」
低く、憎悪のこもった声に、あたしの意識は薄れていく。
視界の消えた私の脳に、
「終わりかえ、レニア」
「うるさいよ、ラナ。関係ないさ、コイツは殺す」
そんな会話が、聞こえたような気がして消えた。
これで死ねる。でも、本当に?
もしかしたら私は、まだ死んでいなくて。もしかしたら私は、生まれてすらいなくて。
どことも知れない夢の狭間を、ただ行ったり来たりしているだけなのかもしれない。
そんなくだらないことを考える余裕だけはしっかりとあったが、そこで意識は消えていった。




