計画
「王子、それ本気で言っていますか」
王子は、ゆっくりとうなずく。
「もし私と王子が逃げても、どのみち捕まえられて殺されます」
ラナは『逃げようなんてちょっとでも思ったら、お前の首も王子の首も飛ぶ』と言っていた。その目はただの脅しなんかじゃなく、本気言っていた。
「危ないですよ」
「そんなこといったって」
弱気な私を、王子が叱咤する。
「いつまでもここにいるわけにはいかないだろ。逃げなくちゃ」
どのみち、逃げなくても殺されるだろう。向こうの狙いはわからないけれど、少なくとも私たちを生かしておく気はなさそうだ。
王子はそんなことを言っていた。どんなに必死に王子が説明していても、どうしても逃げる気分にはなれなかった。
なぜだろう。死んでもいいと、殺されても構わないと思ってしまうのだ。
さっき泣いたからだろうか。自分の中に、生への執着と言うものが驚くほどなくなってしまった。
「おとりになりますから、王子だけで逃げてください」
「でも、それじゃリュートは」
「大丈夫です。私は、大丈夫ですから」
自分は死んだっていい。王子だけには生きておいてもらわないと。この国を治める、大事なお方なのだから。
「リュート」
それで大丈夫か、と私の顔を覗き込む王子から逃げ、じっと床を見つめる。
「作戦会議、しましょうよ。おとりは私でいいですから、王子はどうやって逃げるんですか」
多少、口調がぶっきらぼうだった。機嫌がわるそうに見えたのかもしれない、おとりを怖がっているように見えたのかもしれない。でも、王子は何も言わなかった。何も聞かず、
「そうだね、俺は…」
と、脱出計画を考え出した。
王子、あわよくば、私を死なせて下さい。
柄にもなく、そんなことを思う。生きているのが、王子をこんなことに巻き込んだ自分が、家族を苦しめているであろう自分が、
――どうしようもなく、怖くなった。




