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もしも  作者: 空猫月
36/51

殺意

「何か、聞きたいことはあるかい?」


 余裕な顔をして、ラナが聞く。

 そりゃ、聞きたいことはいっぱいある。でも、「何かない?」と言われれば、ぱっと出てくる言葉がない。

 王子はどこ?といっても、今の私が王子にできることって何だろう?もう一度事情を説明してもらうのも、何だか悪い。

 しいて言うなら、うまく体にハマらない感情を落ち着かせるために、ちょっと一人にしてほしい。


「なるほど、それがお前の望みかえ」

 ラナが言う。

「また、頭を見透かしたの?」

 なぜだろう、声が少し震えている。

「なら、一人にしてやろうかえ。でもね、余計なことを考えるんじゃないよ。逃げようなんてちょっとでも思ったら、王子の首もお前の首も」

 そこで言葉をきって、ぐっと私を睨みつけるラナ。


――飛んじまうよ。


 ゾッとした。

 たった一言に、ありったけの悪意がつまっていた。真っ直ぐな視線には、嘘というものが存在していなかった。私は明確な殺意をぶつけられた。

 ふらふらと全身から力が抜け、私は床に倒れ込んだ。起き上がる気なんてしない。ラナはすでに部屋を出ている。


 誰にも見られない。誰にも邪魔されない。そんな状況で、私は思いっきり泣いた。


 どうしてかは分からない。ただ、私は悲しかった。苦しかった。

 あれだけの殺意に耐えきれなかったのかもしれない。ラナの変わりように怖くなったのかもしれない。

 もしかしたら、状況が分からな過ぎて辛くなったのかも。


 最近泣きすぎだよ、バカ。そんなことを思いながらも、涙は止まってくれない。

 堰が崩壊してしまったかたのように、ただただ、涙があふれた。泣き終えると、なんだか妙にすっきりした。


 首がとぶ、なんて明確な殺意をぶつけられたことはショックだけれど、よくよく考えれば私はずっと「死ね」と言われたかったのかもしれない。口を減らすために売られるくらいなら、国の人口を減らすために売られるくらいなら。

「お前なんて、居ない方が良かったんだ」

 とでも言って、殺してくれれば良かった。半端に生かされて、苦しみをじわじわと味わわせるくらいなら。


 そうだ。私はずっと、死にたかったんだ。


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