殺意
「何か、聞きたいことはあるかい?」
余裕な顔をして、ラナが聞く。
そりゃ、聞きたいことはいっぱいある。でも、「何かない?」と言われれば、ぱっと出てくる言葉がない。
王子はどこ?といっても、今の私が王子にできることって何だろう?もう一度事情を説明してもらうのも、何だか悪い。
しいて言うなら、うまく体にハマらない感情を落ち着かせるために、ちょっと一人にしてほしい。
「なるほど、それがお前の望みかえ」
ラナが言う。
「また、頭を見透かしたの?」
なぜだろう、声が少し震えている。
「なら、一人にしてやろうかえ。でもね、余計なことを考えるんじゃないよ。逃げようなんてちょっとでも思ったら、王子の首もお前の首も」
そこで言葉をきって、ぐっと私を睨みつけるラナ。
――飛んじまうよ。
ゾッとした。
たった一言に、ありったけの悪意がつまっていた。真っ直ぐな視線には、嘘というものが存在していなかった。私は明確な殺意をぶつけられた。
ふらふらと全身から力が抜け、私は床に倒れ込んだ。起き上がる気なんてしない。ラナはすでに部屋を出ている。
誰にも見られない。誰にも邪魔されない。そんな状況で、私は思いっきり泣いた。
どうしてかは分からない。ただ、私は悲しかった。苦しかった。
あれだけの殺意に耐えきれなかったのかもしれない。ラナの変わりように怖くなったのかもしれない。
もしかしたら、状況が分からな過ぎて辛くなったのかも。
最近泣きすぎだよ、バカ。そんなことを思いながらも、涙は止まってくれない。
堰が崩壊してしまったかたのように、ただただ、涙があふれた。泣き終えると、なんだか妙にすっきりした。
首がとぶ、なんて明確な殺意をぶつけられたことはショックだけれど、よくよく考えれば私はずっと「死ね」と言われたかったのかもしれない。口を減らすために売られるくらいなら、国の人口を減らすために売られるくらいなら。
「お前なんて、居ない方が良かったんだ」
とでも言って、殺してくれれば良かった。半端に生かされて、苦しみをじわじわと味わわせるくらいなら。
そうだ。私はずっと、死にたかったんだ。




