黒猫
「何がそんなにショックなのかえ。あたしには分からに」
平然と構えている黒猫。
一体こいつは何なのか。私が安売りの子だと知っているのも、「記憶を見させてもらった」という一言も、すべてが謎だ。
一体…
「ほぉ、ようやくそこまで頭が回るようになったか」
私の近くに、王子は居ない。いつのまにか、場所を移されていたようだ。
「ふんふん、面白いねぇ」
黒猫はすんすんと鼻を鳴らす。
「まず、自己紹介からしようか」
のんきな黒猫に、心の底から腹が立つ。
王子は何処だ、お前は何だ、私に何をするつもりだ。ぐるぐると回る疑問。どれから手をつけていいのかがわからない。
ひとまず、ぐっと自分を押さえて黒猫をにらんだ。
「あたしは、ラナ・プロプス。レ二アの使い魔だよ」
ぐっと、自分の眉間にしわがよるのが分かる。
さっき、レ二アさんが溶けて黒猫になったのに、それがレ二アさんの使い魔だって?どういうことだ。
「ふん、頭の回転が悪い子」
それに、さっきから頭の中が見透かされているようで、気味が悪い。
「そうだよ、あんたの頭の中を見透かしているのさ」
「な!」
思わず声をあげた。この黒猫、一体何なんだ。
「言っただろう、あたしは使い魔だと。使い魔なら、相手の頭を読むくらいどうってことない。もっとも、あたしは有能だから、人型に姿を変えたりもできるけどね」
くすんと鼻を鳴らし、胸をそらしてみせる黒猫。
「いい加減、黒猫という呼び方は止めておくれ」
また、見透かされた。
「あたしは、ラナ・プロプスだと言っただろう。ラナ様とお呼び」
黒猫、もといラナはかなりの自信家のようだ。やなやつ。そう思ったけれど、
「だから、様をつけなさいってば」
そんなの、どうでもいいんじゃない、と思ってしまうところにこだわるところが、なんとなく可愛いなと思った。
ま、怒らせるとちょっと怖いけど。




