発見
ふと目を覚ます。
見慣れないところにいて、ハッと跳び起きた。
あたりを見回せば、昨日お世話になった部屋。
明るいからだろうか。壁のひび割れがやたらと目立つ。窓を覆う蔦も、どこか鬱蒼としていて気味が悪い。
「降りなければ」
二階にあるこの部屋では、一階で調理されているはずの朝食の匂いはしてこない。けれど、きっと朝のために準備はしているだろう。
居候のくせに何でもしてもらうのは気が引けるから、手伝わなければ。
ギシギシと音のなる階段を下り、人の気配がする方へと向かう。朝食の匂いがしてこないから、どうしてもレ二アさんの気配を辿るしかない。
「どこ、だろ」
何か得体のしれない不安に駆られて呟いた声には、
ダン、ダンッ!!
という、不気味な物音が返事をしてくれた。
突然のことに言葉も出ず固まっていると、もう一度
ダン、ダンッ!!
と聞こえる。何度も、何度も。
意を決して、音の聞こえる方へと近づいてみた。どうやら、薄暗い木の扉の向こうで、物音がしているらしい。
耳を澄ませて、人の気配を読み取る。何も動いていない、ような気がしなくもない。もしかしたら、ネズミだろうか。
そろりそろりと足音を忍ばせて、扉へと近づく。扉の奥に気配は、何がなんだかよくわからなかった。
何が待っているのか、怖くて指先が震える。それでも、ドアノブにかけた手をグッと握り締め、扉を開けた。
ガタンッ
大きな音がして、何かがひっくり返る。それは一見、椅子のようで。けれども、人の足がぶらぶらと揺れている。
「誰だ?」
ひっくり返ったままの椅子に近づき、足の持ち主を確かめてみる。
と、
「王子!!」
なんと、王子だった。
猿轡をかまされ、足は自由だが手は後ろの方に縛られているらしい。フガフガと声にならない音を発しながら、私を涙目で見ていた。
「何やってるんですか、もう」
椅子ごと王子を助け起こし、縄を外す。思ったよりも厳重に縛られており、はずしてやるのは一苦労だった。
「ふぅ、やっと自由になれた」
そんなことを言いながら手首を回す王子に、私は真っ向からどやしつける。
「全く、こんなところで何やってるんですか。帰りますよ、王子」
手を腰に当て、できるだけ威厳のあるように見せかける。そんな私を、王子はキョトンとした目で見た。
「何言ってるの。俺は誘拐されたんじゃない」
しばしの沈黙。
「あ」
そこでやっと気がついた。王子は誘拐されて、今その王子を見つけたのだということに。これは、王子のよくやる悪ふざけではないということに。
「でも」
それじゃ、王子を誘拐したのは誰だ?
「まだ分からないのか」
私の思っている事がまる分かりなのか、王子は溜め息を吐いた。
「俺を誘拐したのは、」
「レ二ア、だよ」
王子ではない声がする。扉からの光に人影が映る。
顔をあげると、不気味な顔を張り付けたレ二アさんが私を見つめていた。




