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もしも  作者: 空猫月
29/51

発見

 ふと目を覚ます。

 見慣れないところにいて、ハッと跳び起きた。


 あたりを見回せば、昨日お世話になった部屋。

 明るいからだろうか。壁のひび割れがやたらと目立つ。窓を覆う蔦も、どこか鬱蒼としていて気味が悪い。

「降りなければ」

 二階にあるこの部屋では、一階で調理されているはずの朝食の匂いはしてこない。けれど、きっと朝のために準備はしているだろう。

 居候のくせに何でもしてもらうのは気が引けるから、手伝わなければ。


 ギシギシと音のなる階段を下り、人の気配がする方へと向かう。朝食の匂いがしてこないから、どうしてもレ二アさんの気配を辿るしかない。

「どこ、だろ」

 何か得体のしれない不安に駆られて呟いた声には、


ダン、ダンッ!!


 という、不気味な物音が返事をしてくれた。

 突然のことに言葉も出ず固まっていると、もう一度


ダン、ダンッ!!


 と聞こえる。何度も、何度も。

 意を決して、音の聞こえる方へと近づいてみた。どうやら、薄暗い木の扉の向こうで、物音がしているらしい。

 耳を澄ませて、人の気配を読み取る。何も動いていない、ような気がしなくもない。もしかしたら、ネズミだろうか。


 そろりそろりと足音を忍ばせて、扉へと近づく。扉の奥に気配は、何がなんだかよくわからなかった。

 何が待っているのか、怖くて指先が震える。それでも、ドアノブにかけた手をグッと握り締め、扉を開けた。


ガタンッ


 大きな音がして、何かがひっくり返る。それは一見、椅子のようで。けれども、人の足がぶらぶらと揺れている。

「誰だ?」

 ひっくり返ったままの椅子に近づき、足の持ち主を確かめてみる。

 と、


「王子!!」


 なんと、王子だった。

 猿轡をかまされ、足は自由だが手は後ろの方に縛られているらしい。フガフガと声にならない音を発しながら、私を涙目で見ていた。

「何やってるんですか、もう」

 椅子ごと王子を助け起こし、縄を外す。思ったよりも厳重に縛られており、はずしてやるのは一苦労だった。

「ふぅ、やっと自由になれた」

 そんなことを言いながら手首を回す王子に、私は真っ向からどやしつける。

「全く、こんなところで何やってるんですか。帰りますよ、王子」

 手を腰に当て、できるだけ威厳のあるように見せかける。そんな私を、王子はキョトンとした目で見た。

「何言ってるの。俺は誘拐されたんじゃない」


 しばしの沈黙。


「あ」

 そこでやっと気がついた。王子は誘拐されて、今その王子を見つけたのだということに。これは、王子のよくやる悪ふざけではないということに。

「でも」

 それじゃ、王子を誘拐したのは誰だ?

「まだ分からないのか」

 私の思っている事がまる分かりなのか、王子は溜め息を吐いた。

「俺を誘拐したのは、」


「レ二ア、だよ」


 王子ではない声がする。扉からの光に人影が映る。


 顔をあげると、不気味な顔を張り付けたレ二アさんが私を見つめていた。


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