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もしも  作者: 空猫月
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対話

 レニアさんとの会話は楽しい。

 私のことを見透かしているかのようで、何もかもを知っていた。でも、不思議と好印象しか受けず、居心地が悪い思いはしなかった。


「王子を知りませんか?」

 

 そう聞いたときでさえ、レニアさんはにっこりとほほ笑んでいった。

「レント王子のことでしょ?」

 と。

 普通だったらおかしい。まだ公表されていないことなのに、なんでこんな山奥に住んでいる人が知っているのか。おかしいじゃないか。

 でも、その時の私はそんなこと思わなかった。


「私、王子を探しているんです。私の不注意で、誘拐されてしまって。この森にいるって王に言われたんですけど、ご存じないですか?」


 気づけば、そうまくしたてていた。レニアさんに、期待していた。

 なんで、気を許してしまったんだろう。

 とにもかくにも、この時の私はどうかしていた。普段ならしないのに、ということを平気でしてしまっていた。

 なにか、わけのわからないものに中(あ)てられたとしか思えない。


 少し眉をひそめて考え込むレ二アさんに、さらに説明を続ける。

 自分が城の家政婦をしていることも、泣いていたときに王子が誘拐されたことも、すべてを話した。なぜか、私は言うすべての情報をレニアさんはとっくに知っていたけれど。


「だから、レ二アさんがご存じないかな、と思って」


 そこで息をつくと、じっとレ二アさんを見つめた。薄茶色の瞳が、私を捕らえる。私はなぜか、泣きだしたい衝動にかられた。

 この人になら、自分をさらけ出せそうな気がした。甘えても、受け止めてくれるような気がした。


 息のつまる沈黙に、いい加減嫌気がさす。私は何度、こんな思いをしなければいけないのか。ふうっと溜め息をつこうとした時、

「あっはっはっは!!」

 いきなり、レ二アさんが笑いだした。そして、きょとんとする私に一言。

「誘拐犯が、自分誘拐しました、なんてあたしに言うわけないじゃない」

「あ」

 そうだ、そうだった。誘拐した人なんて、本人以外知る由もない。なんで、レ二アさんに聞いたのだろう。

 恥ずかしさに、私は真っ赤な顔を俯かせた。蝋燭のせいか、耳までじりじりと焼けるような気がする。


「まぁ、疲れているんでしょう。今日のところは、一晩泊まりなさいな。階段を上って右に曲がった突きあたりの部屋に、来客用のベッドがあるから。今日はそこで、おやすみなさい」


 レ二アさんの優しい声に、私は頷いて部屋へと向かった。疲れていたのは本当だし、今日泊まりたいと思っていた矢先のことだ。


 なんて準備のいい人だろう、と私はそのとき好印象しか受けなかった。

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