疲労
「ここ、なのかなぁ」
吐息ともため息ともつかない空気が、唇の隙間から漏れる。
私は鬱蒼とした森のような場所を彷徨っていた。おじさんに教えられた方向へ、がむしゃらに走ってきた結果、ここがどこだかわからなくなってしまった。
土地勘はないし、もともと方向音痴だから北さえもわからない。
「北斗七星・・・」
見つけられるだけのスキルは自分にあったかな、と思いつつ上を向く。
空は夕日でオレンジ色に染まり、星はまだでていなかった。
どこにも行きようがなくなって、ばったりと近くの茂みに体を倒す。
どこか懐かしい土に匂いに、私は体の力を抜いた。
私はかつて、竹藪の中に住んでいた。
家の付近の竹藪を抜ければそこには大きな山があり、食料を求めて年中山のぼりをしていた。そのせいで迷うことも多々あった。
山の中で一人寂しく泣いたこともあった。ばったりと地面に倒れ、そのまま動けなくなったこともあった。
思い出せば思い出すほど、たくさんの思い出が山には詰まっている。
たくさん泣いて、たくさん転んで、その後私は必ず家に帰れていた。
食料が一斉に焼かれる匂いをたどり、微かに光る灯りを探し、とにかく下へ下へと降りて行けば良かった。
そうすれば、家で心配して待っている家族に、抱きしめてもらえた。
けど、ここではそうもいかない。
匂いもしないし、灯りも見えない。それに、あの城に帰るなんてできるはずない。
途方に暮れて、私は目を瞑った。ゆっくりと迫ってくる睡魔に、あらがう気力は残ってなかった。




