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出立
「今から、旅立ちます」
そう告げて、城を出る。
アンは心配して、
「今から行くの?もう少し準備すればいいのに。なにも、今すぐ行かなくったっていいのよ。まったく、国王も無茶なこと言うんだから」
とか何とか言いながら、手早く作った保存食とお金を持たせてくれた。
「生きて、帰ってきて」
そんな大げさな言葉と、一緒に。
国王は相変わらず何も言わなかったけれど、たったひとつの寂しそうな背中が静かに期待をしていた。
私が、王子をこの城に連れて来ることを。
裏口で靴を履いている際、そっと背中が優しく押された。
振り返ると、ミンフィス。スンスンと鼻を鳴らし、私にすり寄ってくる。
「何、一緒に行きたいの」
そっと声をかければ、ミンフィスは頷くように首を振った。
じっと私を見つめるミンフィスの力強い眼差しが、たまらなく嬉しくなって、私はギュっと抱きつく。
「ありがとう。でもね、私は大丈夫だから。ミンフィスは、ここにいて」
頭を撫でてやると、ミンフィスはそっと離れていった。
私の泣き顔を見ないでいてくれるつもりか。どこまでも、賢くて優しい虎だ。
「行ってきます」
小声で呟いても、聞いていた人なんていなくて。でも、なんだか心の支えが一本出来たみたいに感じられて。
夜の闇に向かって、私は勢いよく走りだした。




