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もしも  作者: 空猫月
21/51

出立

「今から、旅立ちます」

 そう告げて、城を出る。


 アンは心配して、

「今から行くの?もう少し準備すればいいのに。なにも、今すぐ行かなくったっていいのよ。まったく、国王も無茶なこと言うんだから」

 とか何とか言いながら、手早く作った保存食とお金を持たせてくれた。


「生きて、帰ってきて」


 そんな大げさな言葉と、一緒に。


 国王は相変わらず何も言わなかったけれど、たったひとつの寂しそうな背中が静かに期待をしていた。

 私が、王子をこの城に連れて来ることを。


 裏口で靴を履いている際、そっと背中が優しく押された。

 振り返ると、ミンフィス。スンスンと鼻を鳴らし、私にすり寄ってくる。

「何、一緒に行きたいの」

 そっと声をかければ、ミンフィスは頷くように首を振った。

 じっと私を見つめるミンフィスの力強い眼差しが、たまらなく嬉しくなって、私はギュっと抱きつく。


「ありがとう。でもね、私は大丈夫だから。ミンフィスは、ここにいて」

 頭を撫でてやると、ミンフィスはそっと離れていった。

 私の泣き顔を見ないでいてくれるつもりか。どこまでも、賢くて優しい虎だ。

「行ってきます」

 小声で呟いても、聞いていた人なんていなくて。でも、なんだか心の支えが一本出来たみたいに感じられて。


 夜の闇に向かって、私は勢いよく走りだした。


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