消失
それから、私は何事もなく仕事に戻った。
さぼった理由は言っていない。アンは何も聞かなかった。
「王子の様子、見てきて」
夕飯の支度の途中、唐突に言われたアンの一言に、自分でも笑ってしまうくらいビビってしまう。
それでも
「分かった」
とだけ返事して、部屋へと向かった。
コンコン、とノックをしても、王子の声は聞こえない。
「王子、入りますよ」
ドアを開けて中に入る。
その瞬間。
とてつもなく嫌な匂いが、私を襲った。何かを燃やしたような、焦げ臭いにおい。
何となく部屋に入りたくなくなって、私は立ち止った扉の脇で立ち止ったまま問いかける。
「王子?何したんですか」
また、黒魔術に失敗したのかもしれない。
王子は一度、黒魔術に失敗して椅子を焦がしてしまったことがあるのだ。今回もそれの類かもしれない。
けれど。
なんだろう、とても嫌な予感がする。得体のしれない悪寒が、背筋に張り付いて取れない。
「王子」
再度呼びかけるも、王子からの返事はなく。
立ち止っている場合じゃないと、部屋の中を見て回る。
ベッドの中、机の下、箪笥の中。絨毯をめくる、ローテーブルをひっくりかえす、床とベッドの隙間を覗く。
どこをみても、何をしても、人影すらなかった。
「王子、王子!レント王子!!」
気が狂ったように王子の名を呼ぶ私の声を聞いたのか、一人の大臣が部屋にかけつけてくれた。
「どうしたんだ」
と言われたような気もするけど、私に答える余裕はない。ただ、王子のことが心配で、泣くばかりで。
様子を見にこなかった自分への自己嫌悪に苛まれていた。
それからのことは、正直よく覚えていない。アンが飛び込んできて、ビシビシ指示を出していたような気がする。
けれど、アンが何を言っていたのか、結局どういうことに落ち着いたのかは知らない。
私は、よくわからないまま部屋に寝かされていた。
どーでもいいですが、13日の金曜日ですね!
魔女の集会♪
一度、見てみたいものです。
…あれ、13日の金曜って、ただの不吉な日だったっけ…。
以上、作者の戯言でした。