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もしも  作者: 空猫月
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援護

 庭に出て、ミンフィスを遊ばせて、その隙に気が済むまで泣く。

 こんな自分勝手なこと、よくミンフィスは許してくれた。ありがたい、本当にありがたい。


 やっと気が済んで、ぐすぐすと鼻を鳴らしながら目をこする。目とその周りの部分が火照っているようで、手の甲に熱が伝わる。

 随分泣いてしまったようだと思いつつミンフィスに目をやれば、少しだけ視界が狭くなったような気がした。


「ミンフィス」


 小さく呼べば、ミンフィスはすぐさま傍に寄ってきた。私が座っていたベンチに飛び乗り、そっと寄り添ってくれる。


「ありがとうね」


 と喉を撫でてやれば、気持ち良さそうに目を細めてくれた。そんな様子が可愛くて、これからは牙を見ても唸り声を聞いても、絶対に怖がらないでおこうと決めた。


 一体、どれだけの時間が過ぎたのか。のろのろと台所へ向かっていると、

「リュート!」

 いきなり、アンが駆け寄ってきて私を抱きしめた。

「どこ行ってたの、心配したよ」

 本当に不安そうに揺れている声に、自分のしたことがずっしりと心の中に響いてきた。


 ああ、私はアンを裏切って自分一人楽な思いをしていたんだ。アンは一人で仕事をこなして、その間私はただ泣いていたのだ。


「ごめんなさい」

 謝ると、アンは私をきつく抱きしめていた腕を緩め、しっかりと私の目を見て言った。

「何、してた?」

 言うべきか、言うまいか。迷った。


 私は、泣いていたのだ。でも、それはミンフィスの監督で。どちらを言い訳にするのが正しいのか、どうしたらアンを傷つけずに済むのか。


 ぐっと唇を噛んで考え込めば、

「言いたくないなら言わないでいい」

 と、アンが静かな声で言った。

「でも、辛いなら言って。辞められちゃ、嫌だから。あなたは、わたしの…」

 いつの間にかアンの瞳には涙が溜まり、手はきつく私の腕を握っている。かすれて聞こえなかった語尾は、はっきりと私ではない誰かを重ねていた。

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