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もしも  作者: 空猫月
11/51

昼②

 そしてもう一つ。私の重大な仕事として、虎のミンフィスが庭で遊ぶときの監督がある。


 ミンフィスが運動不足にならないためにも庭で遊ばせなければいけないらしいが、これがまた大変だ。

 そもそも、大型の猫らしいから一人で遊べばいいと思うのだが、私の手のひらよりも大きい牙で門を破り逃げられると危険らしい。国民に危害を与えてはいけないと、この監督はとっても大事なのだとか。


 ここまで大きい動物を飼ったことがなかったから、最初はとても大変だった。

 ボールを投げてやるだけでも億劫で、食料とは思わなくなったけれど、逆にこっちが食料になりはしないかと毎日びくびくしている。

 今では頭を撫でてやることもできるけれど、何かに牙を向けて唸るところを見ると、やっぱりビビってしまう。


「ほら、ミンフィス。行っておいで」

 ミンフィスは頭が良いらしく、行っておいでと言うまで庭に飛び出したりはしない。

 肉を与えたときも、良いというまで食べたりはしない。その分、食べている最中の凶暴な顔が怖かったりもするけれど。

 一緒にいるうちに、だんだんと愛着が湧いてくる。


 芝生の中でごろごろするミンフィスを見てほのぼのしていると、いつの間にか夕飯の時間になる。

 慌ててミンフィスを城の中に呼び、アンを手伝いに行けば、朝食・昼食と同じようにバタバタして、その最中に風呂の用意をしなければならない。


 食事を終わらせ、国王と王子が風呂に入ったのを確認して私達も入り、やっと一息つきながらご飯を食べる。


 その後、アンは早々に寝てしまうが、私はこれからお勉強だ。特別に家庭教師を付けてもらって、気が済むまでおしえてもらっている。


 文字は自分の国で使っていた独特のものしか読めない。言葉だって、こっちにきてやっと覚えたのだ。

 会話は出来るようになったけれど、文法は分からない。計算ももちろんできないし、この国の文化は全く持ってダメ。


 そんなただの家政婦に、国王はニッコリ笑って「君は家族じゃないか」と言ってくれた。教養は今後どうしても必要になるから、とも。


 そのときは、思わず泣いてしまった。例え異国人であろうと私を大切に思ってくれる人がいるのだと、私は初めて知った。

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