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半額人間

作者: みぎゃー
掲載日:2026/07/24

半賀久太郎はんが・くたろう42歳。

彼は生まれ持って、あらゆる商品を半額で買えてしまう人間だ。


更に言えば、半額弁当を買う時には更にその半額、75%オフで買える。

彼の人生はあまりにもお得過ぎるように思われた。

しかし、そればかりでは無かったのだ。


~うんざりする回想シーン~


彼は非常に辺鄙な田舎で生まれた。

生活に必要な食料や物資は基本的に物々交換。

パンツが臭くなってくれば、隣の家の爺さんに相談し、

かろうじて今履いているものよりも臭くないものと交換した。


貨幣という概念も無い為、彼らは税金の取り立てに来た国の人間を

人参を投げつけて追い返した。


そんなものだから、久太郎は読み書きがあまり出来なかった。

代わりに何故か隠れキリシタン大名の生き残りがいた為、

英語だけはネイティブ以上に流暢であった。


そんな彼の趣味は専ら、偽硬貨作りだった。

偽札製造はあまりに罪悪感が咎めたため、せめて硬貨ならと

彼はオンボロな牛小屋を立派に改造して、

オンボロな偽造工場を設えた。


村の人々は彼が作ったその工場をトイレとして使用し始めた。

久太郎からすれば望むところだった。

何故なら彼が本当に作りたかったのは偽造工場では無い。

皆が安心して用を足せる公衆トイレだったからである。


こうして人生の早いうちに大成功を収めた彼は、

ついには別の国へと留学を検討する。

別の国と言っても海向こうの海外の国では無い。


久太郎にとって留学と言うのは、小さな川を挟んで隣にある

ゴム村へと学びに出る事であった。


ゴム村では国で流通している貨幣経済の真似事をしていた。


「はい、360円ね。」と言いながら700円を渡す。

しかしそれで成り立ってしまう、大変大らかな環境だ。


久太郎はその留学先で三日三晩寝ずに、学び続けた。

そうして彼が5年の修行期間を経て金銭とは何たるかを学んだ。


そして彼はついに町に出た。

彼の持つ特殊な神通力のようなものに影響され、

商売人達は皆、彼に商品を半額で譲った。


この頃には久太郎は大学教授並みの倫理観や知識を得ており、

十分に一般社会に違和感無く溶け込んでいた。


彼の生活費は驚く程安かった。

しかし、彼が働く度に給料も半額であった。

彼に付いて回る金銭は収支いずれも半額だったのだ。


ある者は彼の噂を聞き付け、彼と共に買い物をしようとした。

しかし、あくまで彼の意思で彼が消費したり使うもので無いと

半額にはならなかった。

彼は様々なお得な生き方があったのかも知れないが、

彼なりに人の半分の収入と半分の消費で生きた。

そこにあまりお得という感覚は無くなっていた。


借金をしに行っても、借りられる金額は半額。

利率は返済総額が丁度半額になるように調整された。


しかし彼はある時気付いた。

もっと大きな買い物をし、それを『自分のもの』であると言える時、

それは相当お買い得な買い物になるのでは無いか。


彼はまず政府の首相に取り合った。

自身の能力を証明した後、ある計画を彼に打ち明けた。


首相は二つ返事をし、彼にその座を譲った。

首相となった彼は『軍事兵器』や『島』といった

非常に高額な買い物をした。

しかもそれは『自身の所有物たる国のもの』という名目で

見事に良い条件で購入を叶える事が出来た。


国は潤った。

何せ非常に高額な買い物を半額で済ませられたのだから。

国の財源は豊富に余り、それを地域サービスに使った。


やがて久太郎は気付いた。

「この国やそこに住む人々、いやむしろもういっそ

 地球に住む全ての人を自分の所有物にしてしまえば

 全てが半額で足りるのでは無いか」と。


久太郎がそれを行った途端、世界は半減した。

しかしそれで良かった。世界は元々半分で十分だった。

やがて久太郎の意思を継ぐ者達が世代毎に現れ、

世界は『半減期』を繰り返した。


そうして幾星霜の時間が経った後、そこに残ったのは

人間の目では視認出来ないほどの塵だった。

しかしいくら半分にして行ってもそれは無くならなかった。

こうして永遠に繰り返す半額人間は永遠の概念となった。


おわり。

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