⑦ 籠絡される王
そもそも、昔から"犬猿の仲"と言われているように、犬族と猿族とでは、歴史的に相性が良くないと言われて来た。
それにハダカ猿族どもは、好戦的なことこの上ないのだ。基本的に平和主義者の犬族たちとは、相容れない大きな問題である。
だが、この由理子とやらはどうだ。
何だ。この彼女が全身に纏う平和のオーラは?
それに、あの抗い難い素敵な笑顔。
まるで、犬族が心の奥底で求めているモノを、全て知っているかのような…。
「…さま、…おうさま、…犬王様!」
「お、おお、なんだ?済まんな。少し考え事をしていた。」
「せっかくなので、この後、ミケーネと一緒に、犬の街を散策してもよろしいでしょうか?」
そう言う由理子に対して、アヌビスがノーと言うはずも無かった。
「うん、良いとも。自由に見て参れ。特に見られて困るような、秘密も無いからな。」
犬王アヌビスは、快く彼女たちを送り出したのだった。
由理子とミケーネは、犬王の城を出ると、早速城下町に繰り出した。
街は緑豊かに整えられていた。
ただ、ニンゲンの街と大きく違うところは、男性用の公衆トイレだった。
コレは勿論、由理子が目視したのではなく、ミケーネの証言なのだが、小便器の真ん中に棒が立っているのだそうだ…理由は皆さんのご想像通りである。
あんなオカシナ物、我が国には無いぞ。
ミケーネはそう言って笑っていた。
そうそう、この世界のハダカ猿族…つまりニンゲンたちは、遥か昔に絶滅したのだそうだ。その理由は…やはり皆さんのご想像通りなのである。
つまり、概ね映画"猿の惑星"と同じ流れなのね。
由理子は、そう理解したのだった。
それにしても、街で見かける光景は、由理子にとっては、頭の中にお花畑が生まれてしまいそうな程、ファンタジックなモノだった。
建ち並ぶ家々は、どれもアースカラーの色彩で彩られており、こじんまりとして可愛らしい。
あと、何と言っても、街行く人々…いや、犬たちが、またカワイイ。
色とりどりの服を着て、直立歩行でヨチヨチ歩く姿…中でも親子連れなどは、キュートな事この上ない感じがした。
それを見て歩きながら、思わず頬を緩める由理子に対して、猫王が言った。
「何だつまらん、由理子は犬派なのか?」
「う〜ん、決してそういう訳では…。」
由理子は慌てる。
「なんて言うか…それぞれの良さがあるわよね?」
「…と言うと?」
「犬はいつでも、オープンマインドでフレンドリーだし、猫はいつでも、自分自身の軸のようなモノをしっかりと持っていて、高貴な感じなの。どちらも素敵な特性だわ。」
「…そんなウマい事を言っても、ナニも出ないぞ。」
そう言いながらも、まんざらでもない感じの、ミケーネである。
由理子は流石である。猫族の、ちゃんと褒めて欲しいツボが、分かっているのだった。




